過去の記憶 ページ24
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脳への衝撃がよほど強かったのか、ギルガメッシュは宝具を展開すらしない。
それがこちらにとっては好都合だった。
未だ何も発さない私を見て、初めてこの男の瞳に恐怖の色が走った。
実際に恐れの態度をとっている訳ではないが、人間が誰しも抱くものをこの男も見せたのだ。
自分が相手より不利な状態に置かれた場合の、本能的な防衛反応を。
そうだ、もっとだ。
うつ伏せになっているギルガメッシュの背中に馬乗りになる。
そしてそのまま――
私は彼の顔を手で覆った。
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刹那、腕に激痛が走る。
痛すぎて最早感覚が麻痺する。
同時に、私は見た。
英雄王の過去を。
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だがその映像は直ぐに途切れた。
理由は単純だった。
私が一瞬でギルガメッシュから身を引いたからだ。
驚いた。
信じられなかった。
一瞬だけ、ほんの少しだけ覗き見た
英雄王の過去。
この男は
笑っていた。
今とは違う。
純粋に
心から
曇りなく
にこやかに
笑っていた。
そして同時に見えた
涙を流しながら
泥を抱きながら
叫ぶその姿。
心より先に脳が判断した。
拒絶した。
これより先は、見てはいけない、と。
受け入れることなど出来ないと。
ギルガメッシュ叙事詩。
その本なら読んだ。読み込んだ。
だからこの男の結末も知っている。
それでも
信じる事など出来なかった。
よろよろと後ずさり、遂には力が抜けてへたり込む。
腕の痛みなど忘れた。
それよりも、頭が痛い。
胸が痛い。
私は、今、
何という事をしようとしていたのだ。
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先程とは違う、本当の意味で黙り込んだ私を
ギルガメッシュは怒らなかった。
ただ静かに、私を見つめていた。
最後に、気絶する直前に、一言だけ。
「……それか、お前を縛るのは……」
ただそれだけを言い残した。
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時臣に気づかれないように屋敷に入る。
そのままサーヴァント用の個室に直行し、ギルガメッシュを寝台に横たわらせた。
元々私が叩きつけた分と、その後の私の"起源"の後遺症により
今も尚目を覚まさない。
明日殺される。
その確信だけはあったが、今の私にはどうしようもない。
私は静かに部屋を去った。
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カエデ - もう更新は絶望的かもしれませんが、いつまでもお待ちしております😭 (10月8日 14時) (レス) id: e7e0135c10 (このIDを非表示/違反報告)
指導者は白痴、かかってこいや当局 - まじかよ本当にいいとこで終わってんな、、、 (2021年8月26日 23時) (レス) id: 55ab4f5815 (このIDを非表示/違反報告)
Na Ryu(プロフ) - うそん!!?めっちゃ良いとこで終わってるー!! (2021年1月4日 9時) (レス) id: e0675e6765 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - コメント失礼します。ギルガメッシュが好きでこの小説を読み始めました。続きがものすごく気になります!更新頑張ってください!! (2020年6月12日 17時) (レス) id: 5728e25ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめの - コメント失礼します^o^凄く面白いです!更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月21日 19時) (レス) id: a922e9fda4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:またたび | 作成日時:2016年6月19日 6時