例の案件 ページ15
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「しかし、貴様…よくあそこまで気配を消せるものだ。誰か、背から刺し殺したい輩でもいるのか?」
遠坂邸に戻ってきたギルガメッシュの第一声は、私が動きを止めるのに十分なものだった。
『……何?』
動揺するつもりはなかった。
必要もなかった。
だが、動揺してしまった。
今私が発した声は、明らかに殺気を隠しきれていなかった。
「……………その威圧……やはり……」
ピクリと英雄王の眉間がひくつく。
同時にその口元から笑みを零す。
「……面白い……少々失望していたが、どうやらまだ隠し玉を忍ばせているようだ。」
意味など分からない。
隠し玉?
そんな御大層なものは生憎持ち合わせていない。
しかし、私は再びほっとしてしまった。
ギルガメッシュの失望を、挽回できたのだ。
何が彼の興味を引いたのかわからないが、それでいい。
彼の視界から消されてしまう事は、どうしても避けたかった。
((……何……この感情は……?))
それと同時に理解した。
この感情は恐怖でも愛情でもない、尊敬などでもない。
欲、そして期待。
私は期待しているのだ。
ギルガメッシュ、世界最古の王に、
私の知らない世界を私のために見せてほしい、そんな自分勝手な願いを胸に抱いている。
だが彼ならきっと出来る、だからいつか――
その感情は、まさに醜さの権化、化身であると思った。
なんて汚れた心を持っているのだと、自嘲せずにはいられなかった。
なのに、どうして
私は笑っているのだろうか。
「……何を笑っているのだ、気色悪い。」
ギルガメッシュの呆れた表情を見て漸く口元が変に上がっている事に気づいた。
そう、高揚してしまった。
初めて知った、新たな感情だった。
新たな餌が目の前にぶら下げられた。
『……いや、ただ、私も………面白いと思ってしまった、だけ。』
一体始めに何の話をしていたのだろうか。
そんな事気にならない程、私はその真実を知った事に喜びを覚えたのだ。
「………ほう………貴様……無気力に見えて案外多情よな。」
『…そう…』
輝く粒子となって消えていくギルガメッシュを見届け、屋根裏部屋に戻る。
瞬間ドッと疲れが押し寄せてくる。
戦場の気迫は私の想像していた遥か上のものだった。
ただ近くにいただけだというのに、身体ではない精神の力が削られている。
『………これが………聖杯戦争。』
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カエデ - もう更新は絶望的かもしれませんが、いつまでもお待ちしております😭 (10月8日 14時) (レス) id: e7e0135c10 (このIDを非表示/違反報告)
指導者は白痴、かかってこいや当局 - まじかよ本当にいいとこで終わってんな、、、 (2021年8月26日 23時) (レス) id: 55ab4f5815 (このIDを非表示/違反報告)
Na Ryu(プロフ) - うそん!!?めっちゃ良いとこで終わってるー!! (2021年1月4日 9時) (レス) id: e0675e6765 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - コメント失礼します。ギルガメッシュが好きでこの小説を読み始めました。続きがものすごく気になります!更新頑張ってください!! (2020年6月12日 17時) (レス) id: 5728e25ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめの - コメント失礼します^o^凄く面白いです!更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月21日 19時) (レス) id: a922e9fda4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:またたび | 作成日時:2016年6月19日 6時