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手紙を全て読み終えたのはほんの数分後の事だ。しかしこの数分間に、私のうごめく感情は急速に変化していた。
一番の変化は太宰さんが放った言葉の解釈である。
と云うのも私は、手紙を読み終えてから漸く太宰さんが放った言葉の意味を理解したのだ。彼は初めから、私にこの手紙を読ませてジサ.ツを踏みとどめさせる事が狙いだったのだろう。だとしたら大成功だ。現に私はこの場に居て、この手紙のお陰でジサ.ツを辞めようと思っているのだから。
「……太宰さん、私はどうすべき何でしょう。彼の事を忘れるべき何でしょうか、それとも一生抱えたままの方が良いのでしょうか」
だが手紙を読み終えた私には何も分からなくなっていた。今の今まで生き甲斐だったのは、可笑しな話だが死ぬことだったのである。死んで彼の元へ行くことが生き甲斐だった。それも、この手紙のお陰で無くなってしまったのだ。
「……Aさん、それは君が決める事だ。私が決める事じゃない」
「そうですよね」
ポツリと呟く様に放った言葉は、太宰さんによって吸収される。そんな吸収された言葉を追うように、私は視線を手紙から太宰さんの方へと移した。その途端に彼と視線が交わる。
交わった太宰さんの瞳は、窓から入る太陽に照らされてとても美しいと思えた。
私はそんな美しく見える瞳を眺め続けたのだ。と、何も云わずにただ見つめ続けて居れば。太宰さんがその口を薄く開いたのである。
「でも一つ助言をするならば、過去から目を背けろとは私の口からは云えないね。それは私でも出来ない事だからだ。でも過去に捕らわれ続ける事は止めた方がいいよ、過去に捕らわれると云う事は進歩しない事と同じだから」
窓の外から差していた陽が消え、部屋が段々と薄暗くなっていく。それでも尚私は影に姿を隠された太宰さんの目を見つめていた。彼の瞳は、影に隠された尚も光輝いている様で美しかったのである。私はその美しさから目を離せないで居た。
「……太宰さん。私死ぬの止めようと思います」
美しさから目を離すこと無く、今一度決めた事を私が言葉に出した瞬間。再度光が窓から差して込んできて、それまで部屋を覆っていた影が一気に取り払われた。
その突然に訪れた眩しさに思わず目を閉じてから、数秒ほど目を閉じ続ける。そうして次に目を開いた時には、何だか心が浄化されて軽くなっていた気がして。浄化されたと同時に、私の長い夏も終わった気がした。
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夢希 道華(プロフ) - ゆかりさん» コメント下さってありがとうございます！そう言って頂けて、とても嬉しい限りです！占いツクールではもう投稿しない予定なのですが、お暇があれば後書きからサイトを覗いて見てやって下さい。それでは失礼致しますね！ (2018年5月6日 6時) (
レス) id: 9c1c1e423e (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり(プロフ) - 本格的な小説みたいで良いですね！完結おめでとうございます！ (2018年5月5日 22時) (レス) id: e8168b3b40 (このIDを非表示/違反報告)
夢希 道華(プロフ) - 靴下さん» コメントありがとうございます。完結迄頑張って行く所存ですので、どうぞ最後まで宜しく御願い。 (2017年12月4日 14時) (レス) id: 9c1c1e423e (このIDを非表示/違反報告)
靴下 - 話の流れにわくわくさせられて、面白いです!!! (2017年12月3日 22時) (レス) id: a96084b98f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢希道華 | 作成日時：2017年12月2日 15時
