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「元より彼は死にたかったと云って居たよ。そこに偶然君が死にたいと持ち掛けたから乗ったんだ。だってそうだろう？ 普通の人ならジサ.ツ話が彼女から出てきたなら止めるさ」
彼から放たれた正論に、私の心は酷く落ち着きを取り戻せなくなって行く。彼は私が死のうと持ち掛け無くても、いずれかは死んでいた。その事実がクルクルと脳内を巡って、私の脳にインプットされて行くのだ。
だがそうした困惑の一方で、一つの安心してしまった点があった。それは私が彼を殺したと云う罪悪感が薄らいだ事である。私が死ぬ話を持ち掛けたらから彼が死んだのではない、彼は元より死ぬ気でいたんだ。そう思えば思う程に自分の心は安堵感を取り戻していく。
その感覚が最低だとは思った。
けれど私は、結局自分が可愛いからと罪の意識を和らげて行くのである。和らぐ中で安堵感と醜い感情が心の中で争っていく。でも最終的には彼が死んだことに間違い無いのだからと、その感情さえも消し去って行くのだ。残るのは矢張り、虚無感と死にたいと云う感情のみ。
「もうすぐ着くよ、行こう」
そうして顔を下に向けつつも内心で戦って居れば、彼がそう云って来たのだ。私はそんな彼の言葉に、ぼんやりとした意識の中で一度だけ頷きを入れてから、また歩き始めるのである。
そうして歩き初めてから直ぐの事だろうか。彼がふと「嘘吐いちゃったと云ったのだけれど、許してくれるかな？」と言葉を発した。
私はそれに未だフワフワとした意識の中で「はい」と答える。すると彼が続けて「それは良かったよ」と云って、その歩みを止めたのだ。つられて私も足を進める事を止めて、太宰さんの方を見上げた。
「ここは何処ですか」
「騙して御免ね、心中の約束と云うのは嘘だ」
目の前に広がる風景。それは死ぬことが出来そうな川でも、ましてや飛び降りが出来そうな山でも無い。何の変鉄も無い市街地の、何の変鉄も無い赤煉瓦ビル前であった。
「嘘って、一体どういう事ですか？」
「その言葉通りだよ、心中すると云う約束は私が吐いた嘘だ」
動揺のままに彼の後を追いつつも、ビル構内に入った所でそう聞けば、彼はこちらを一切見ること無く「嘘だ」と答えた。私はその返答に対して黙り込んでしまう。
全て彼の嘘だった？
そう分かると、今の今まで積み重なってきた希望や期待感の山が一気に崩れ去っていくのだ。嗚呼、私は今日も死ぬことが出来ないのか。次に沸々と襲ってきた感情はそれだった。そんな感情にさいなまれ始める中で、彼がとある一室の前で止まる。
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夢希 道華(プロフ) - ゆかりさん» コメント下さってありがとうございます！そう言って頂けて、とても嬉しい限りです！占いツクールではもう投稿しない予定なのですが、お暇があれば後書きからサイトを覗いて見てやって下さい。それでは失礼致しますね！ (2018年5月6日 6時) (
レス) id: 9c1c1e423e (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり(プロフ) - 本格的な小説みたいで良いですね！完結おめでとうございます！ (2018年5月5日 22時) (レス) id: e8168b3b40 (このIDを非表示/違反報告)
夢希 道華(プロフ) - 靴下さん» コメントありがとうございます。完結迄頑張って行く所存ですので、どうぞ最後まで宜しく御願い。 (2017年12月4日 14時) (レス) id: 9c1c1e423e (このIDを非表示/違反報告)
靴下 - 話の流れにわくわくさせられて、面白いです!!! (2017年12月3日 22時) (レス) id: a96084b98f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢希道華 | 作成日時：2017年12月2日 15時
