漆拾漆ノ話 ページ28
無一郎sideもう少し続きます
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くっ…痺れが…酷い…
この針……水の鉢から出られた所で僕はもう…
ー杓子定規に物を考えてはいけないよ無一郎。確固たる自分を取り戻した時、君はもっと強くなれるー
お館様の顔だ…
病が進行して痛ましい
無一郎「こ…小鉄、くん」
シュッ
ズバッ
「ギィィッ」
ボロ…
無一郎「ゲホッ、ゲホッ」
肺が痛い、水が入ったからだ
母さんは風邪をこじらせて肺炎になって死んだ
嵐の日だった
薬草を採りに出て行った父は崖から落ちて死んだ
小鉄「時透さん…お、俺のことはいいから…鋼鐵塚さんを…助けて…刀を…守って…このままじゃ…柱の…星香さん…も動けなく…なっちゃう」
両親が死んだのは十歳の時だ
十歳で僕は一人になった
……いや、違う。一人になったのは十一歳の時だ
僕は双子だった
僕の兄は有一郎といった
有一郎「情けは人のためならず。誰かのために何かしてもろくなことにならない」
無一郎「違うよ。人のためにすることは巡り巡って自分のためになるって意味だよ。父さんが言ってた」
有一郎「人のために何かしようとして死んだ人間の言うことなんてあてにならない」
無一郎「何でそんなこと言うの？父さんは母さんのために……」
有一郎「あんな状態になってて薬草なんかで治るはずないだろ。馬鹿の極みだね」
無一郎「兄さん、ひどいよ……」
有一郎「嵐の中を外に出なけりゃ死んだのは母さん一人で済んだのに」
無一郎「そんな言い方するなよ!!あんまりだよ!!」
有一郎「俺は事実しか言ってない。うるさいから大声出すな。猪が来るぞ。無一郎の無は”無能”の”無”。こんな会話意味が無い。結局過去は変わらない。無一郎の無は”無意味”の”無”」
無一郎「……」
兄は言葉のきつい人だった
記憶のない時の僕は何だか兄に似ていた気がする
兄と二人の暮らしは息が詰まるようだった
僕は兄に嫌われていると思っていたし、兄を冷たい人だと思っていた
春頃に人が訪ねてきた
お館様の御内儀だ
あまりにも美しいので僕は初め白樺の木の精だと思った
結局兄はいつものように暴言を吐いてあまね様を追い返した
無一郎「すごいね！僕たち剣士の子孫なんだって。しかも一番最初の呼吸っていうのを使う凄い人の子孫で」
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いぐろ - この作品スゴク面白い！ (2020年10月18日 14時) (
レス) id: abcdb48192 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅玲
| 作成日時：2020年10月12日 23時
