95話 ページ21
──数日後
─夢の森
ミスラ「はぁ……。面倒くさ……。夢の森の主の様子がおかしいってオーエンが言うから、ここまで来てやったのに……。オーエンまで、様子がおかしくなって。ああ、本当に面倒くさ……」
ブラッドリー「こっちの台詞だ」
『はぁ……、なんでこうも毎回面倒ごとに巻き込まれるのか……』
なんでオーエン動かなくなったんだ、本当に
ブラッドリー「まったく、双子のやつら、オーエンの面倒を買って出たいいが、ミスラの世話を俺様とノワに押し付けやがって……」
『本当だよ、はぁ……』
ミスラ「この森、燃やしてやろうかな」
ブラッドリー「止めろ！おい、俺は見てないが、どんな風におかしくなった？」
ミスラ「何がです？」
ブラッドリー「オーエンだよ」
ミスラ「どんなって……。黙ったまま、動かなくなったんですよ」
……怪しいな、これ
ミスラ、絶対何かしたでしょ
ブラッドリー「てめえが妙なことしたんじゃねえのか？」
『ミスラのことだから、無自覚でなにかやったでしょ』
ミスラ「してませんよ。足元に絡んだいばらを引き抜いただけです」
ブラッドリー「いばら？」
ミスラ「ほら、とげとげしたやつ。刺さって、頭にきたんで、掴んで、引き抜いてやったんですよ。そいつが随分、太くて、丈夫な、長い根をしていて」
ブラッドリー「まあな。いばらの根は丈夫だからな。俺が地下に根城をしてた頃、頑丈な石の天井を突き抜けて、生えてきたこともあるぜ」
『いばらは生命力が強いからね』
ミスラ「へえ……。だからかな」
『ん？』
ブラッドリー「だから？」
ミスラ「オーエンも似たようなことを言っていました。天井のいばら。外はとげとげの国。だから、出られない」
ブラッドリー・ノワ「『…………』」
＜大いなる厄災＞の奇妙な傷のような言い方だな……
オーエンは、いばらが生い茂る中で育ってきたのか……
ミスラ「そして、黙り込んで、固まったんです。時間を止めたみたいにね」
ブラッドリー「……そうか。いばらに嫌な思い出でもあんだろ。余計なことを聞いたな」
ミスラ「嫌な思い出？」
ブラッドリー「呪いみてえなもんさ。魂にのしかかる忘れられない景色。……ん？珍しいな。こんなところに人間が倒れてる」
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作者名：紅玲
| 作成日時：2024年2月15日 1時
