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公演も無事終わったある日、私は劇団が事務所兼衣裳部屋にしてるマンションの一室で衣装整理をしていた。
再演があったりもするから、衣装は全て綺麗に残してある。
増える一方のこの衣装たちをこの先どうするのか...と思いながら透明の衣装ケースに詰めて行く。
一通り片付けも終わり、帰ろうとした時。
玄関のドアが開いた音が聴こえた。
「誰か来てんの？」
そう言いながら部屋に入って来たのは、潤さん。
「あ、Aか。衣装整理？」
「はい。...あの」
「ん？」
「スーツなんか着て、どうしたんですか？」
潤さんは「あぁ」と笑って、冷蔵庫を開けて水を出して飲む。
「取材。スーツで来て欲しいって言われたから」
「へぇ、似合ってますね」
「そ？」
ん、と飲みかけのペットボトルを渡された。
「でもすっげぇしんどい。世のサラリーマンを尊敬する」
彼が顎を上げてネクタイを外す。
「あ...、あの、衣装これからどうします？もう部屋いっぱいになって来て...」
あまりにもドキドキし過ぎて、慌てて潤さんに背中を向けた。
「もう再演しない物の衣装は思い切って処分し...あっ」
後ろから腕を引っ張られて、持っていたペットボトルが落ちて水が床に流れ出す。
私の両腕は背中でひとまとめにされ、手首にキュっと軋んだ痛み。
「...え...？」
クスっと笑った潤さんが、私の肩に顎を乗せた。
手首は、さっきまで潤さんの首に結ばれてたネクタイで縛られてる。
「...からかってるんですかー！？潤さん、悪戯好きですもんねー！」
必死で笑うと、「悪戯？」と囁いた彼の息が耳に掛かって息が止まりそう。
「悪戯にも色々あるけど」
「...何...言ってるんですか...」
「Aが悪戯にして欲しいなら、そうするけど？」
後ろから回って来た潤さんの掌に、頬を撫でられる。
「まさか気付いて無いとでも思ってんのかな」
「...何、を...」
「Aの視線」
「......」
「知らないなんて、言わせないよ？」
彼の指が、私の唇をなぞる。
「俺は悪戯してるつもりは無いんだけど」
「...じゃあ、どんなつもりなんですか...」
「言っただろ？」
「......」
「手離せない、って」
潤さんの唇が、首筋に触れた。
「......本気で言ってるんですか...？」
震える声で、彼に問う。
「お前にはこれが冗談に聴こえてんの？」
少し怒ったような笑いを含んだ声と共に、首筋に甘く歯を立てられる。
・・・・・END・・・・・
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2017年2月22日 17時
