２ ページ28
■裏■
もう、17年の付き合いになる。
俺は冬生まれだから、アイツの方が半年だけ年上だ。
だからずーっと「チビチビ！」ってバカにされてた。
だけどお隣に住んでるアイツはいつの間にか俺より小さくなって、ずっとショートカットだった髪も長くなって。
スカートなんか履いちゃって、睫毛もクルンって長くなっちゃって。
何それ、化粧してんの？やめてよ、何か焦るから。
「しょーぉ」
俺を呼ぶ声にカーテンを開けると、いつもの如くAが窓を開けて手を振ってる。
スッピンだ。
「なに？」
「この数学の問題、分かんないの。教えてよ」
「どんな問題？」
隣との窓の距離近すぎてすっげぇ暗い部屋だけど、俺はこれが気に入ってた。
テキストを受け取って、チラっとAを見る。
「A、こんなんも分かんねぇの？」
「嫌なヤツ。そんな言い方してたら女の子にモテなくなっちゃうよ？」
Aが悪戯っ子みたいな顔して言う。
「別にモテたいと思ってねぇよ」
「でもモテてるよね」
「知らなーい」
「こないだ、あの子来てたじゃん。ダンス部の...」
あー...ほとんど喋った事無かった子ね。
突然家まで押しかけて来たから超ビックリした。
「告られたんでしょ？」
「覗きかよ」
「不可抗力だし！」
「あっそ」
「...告られたの？」
見られてたんだ。
黙ってようと思ったんだけど。
「告られましたけど」
「そうなんだ...」
「ほら、こうやって解くの。説明してやるから」
問題を解いて、テキストを返した時に手が触れた。
そんなのいつもの事なのに、Aが手を引っ込めてしまったせいでテキストは下まで落ちてった。
パサって小さな落下音。
「あーもー。何してんだよー」
「...付き合うの？」
「え？」
「告られたんでしょ？付き合うの？」
落ちたテキストを見てた顔を上げたら、目の前のAが泣いてた。
「お前、何で泣いてんだよ」
「...うるさいよ...」
身体を窓からちょっと乗り出して腕をいっぱいに伸ばす。
ポン、とAの頭に手を乗せたらビックリしたように俺を見た。
「俺、どうやらモテるらしい」
「...あっそ、良かったね」
「でも彼女作ったコト無い訳」
「......」
「何でなのか、本気で分かんないの？」
グシャグシャって頭を撫でる。
「お前ホント鈍感。ずっとAだけが好きなんですけど」
どんなに暗い部屋でも、手を伸ばせば君に触れられる。
だからこの部屋が気に入ってんの。
気付けよ、ばーか。
・・・・・END・・・・・
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2017年2月22日 17時
