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2杯目のビールを飲み干し、食事を終えた時。
「庭にでも、出てみる？」
彼が突然、言った。
「庭？」
「お見合いって『ではお庭でも散歩しましょうか』って言わなきゃいけないんじゃないの？」
「え？アハッ、お約束的な？」
「そうそう。ここ、日本庭園あるらしいし」
私達はホテルの中庭に造られてる日本庭園に出て、なーんとなく植栽の松とか眺めて、なーんとなく池に泳ぐ鯉を眺めて。
「鯉、食った事ある？」
「無いです。ありますか？」
「無い。美味いのかな」
「美味しいって聞きますけどね」
何でもない会話をして。
やっと笑ってくれた彼の空気は穏やかで
やっと喋ってくれた彼の声は優しくて
友達でも良いからこの先も会って貰えないかな...ってホント、自然に思った。
「さっきの答え」
「え？」
「どんなつもりで？ってやつ」
「あっ、あぁ...」
自分がした質問返し、すっかり忘れてた。
「その気で来たよ」
しゃがんだ彼は、池に向かってパンパン手を叩いて鯉を呼んでる。
「その、気？」
「見合いする気」
「仕方無く...ではなくて？」
「そんな失礼な事、しねぇよ」
ふふ、と笑って私を見上げる。
「そっちは？やっぱり、仕方無く？」
「.....その気で、来ました」
「そ」
緩く微笑んでる彼の隣に、私もしゃがんで同じように手を叩いてみた。
鯉が集まって来る。
「でもおれ、口下手だし無愛想だし。何話せば良いか分かんねぇし、どんな子かも分かんねぇし」
「.....」
「だけど人の金でビール飲もうとか言い出すから、何か急にラクになった」
こっちを見た彼が、ニコッと笑った。
「大野さんもビールがお好きなんですね」
「智ね」
「へ？」
「智で良いよ。ってゆーか、智って呼んでよ」
目尻がゆるっと下がる。
「結婚したら、Aちゃんも『大野』になるんだから」
くらり、目の前が揺れた感覚。
「見合いって結婚前提の出逢いなんでしょ？」
「あっ...は...一般的には...、そうなのかな？」
「って言ってもまだお互い何も知らないもんね。とりあえず、自己紹介し直す？」
そう言った彼がモゾモゾ動いて、しゃがんだまま体を私の方に向けた。
「大野智です。趣味は絵を描く事だけど本当は釣りも好き」
「あ、五十嵐Aです！読書が趣味って言ったけど...読むのはほとんど漫画です」
彼が「おれも漫画好き」って言って、私と握手した。
ここから、今から、恋が始まる。
鯉が2人を見てた。
・・・・・END・・・・・
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2017年2月22日 17時
