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でも結局、認められたのは大野の企画書。
プロジェクトリーダーは、彼。
携わるメンバーはリーダーからの指名で、私もチームに入れられた。
「私を誘ってくれたのは、お情け？」
自嘲しながらそう訊くと、大野は珍しく眉間に皺を寄せて睨むようにこっちを見た。
「何言ってんの？おれ、情で仕事する程甘くないんだけど」
フイっと顔を背けてしまった彼の背中を見て、何故だか胸がジンジンと痛む。
悔しいんだか、悲しいんだか、全然分かんない。
ただ、溜息が零れた。
大野の指揮で始まったプロジェクト。
やるべき事が多くて、本当に忙しい。
残業しても時間が足りない。
だけど、企画が通らなかった上に仕事も出来ないなんて思われたくない。
結婚の予定も無い。
だったらせめて仕事で認められたい。
きっと私は、人の倍以上働いてた。
別に誰にも頼まれてないのに。
別に誰にも求められてないのに。
その日も私は、一人オフィスに残っていた。
自分のデスク付近以外は照明を消した暗いオフィス。
見回りの警備員さんに「毎日遅くまでご苦労様です」って声を掛けられて、私そんなに毎日残ってたんだ...って急に虚しくなって
PCの画面がじんわりと滲んだ。
...私、何と戦ってんの？
勝手にライバルだと思ってる大野と？
...違う、自分だ。
無駄にプライドの高い自分と戦ってるんだ。
「......もう疲れたよー...」
疲れたのは残業続きの身体じゃ無い。
知らない内に、自分で虐め続けた心。
「A」
「...っ！？」
背後から声を掛けられて振り返ると、そこには大野が立っていた。
「何で...帰ったんじゃなかったの...？」
「おれ、警備員のおっちゃんと仲良いんだけどさぁ」
「......」
「毎日Aが残業してるって、今朝聞いて。だから、ほら！」
じゃーん！って両手に持ってるファーストフードの袋を私に見せて笑う。
フライドポテトの匂い。
「差し入れ！一緒に食べよぉ」
「......」
「泣いたらお腹減ったでしょ？」
「えっ！？」
慌てて自分の頬を触ると、涙でビッショリ。最悪。
「Aさ」
大野が近付いて来る。
「一人で泣くなって」
そして、綺麗な指先で私の目尻をスルリと撫でた。
「ふふっ、すげぇ涙」
「......」
「明日は残業すんなよ？」
「......」
「リーダー命令！」
彼が「で、おれと一緒に飲みに行く事！気晴らししよ」と微笑む。
頷くと、必死で戦ってた自分が解放された気がした。
・・・・・END・・・・・
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2017年2月22日 17時
