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あなたが卒業後どうするのか、進路なんて知らない。
それどころか、『カズ』って呼ばれてる事しか知らない。
それだって、苗字をもじったあだ名なのか、名前をもじったあだ名なのか、それすら知らない。
結局、何も知らないまんま、きっともう会えなくなる。
自転車を出して、ファーストフード店の前を引いて歩いてみる。
あなたは窓際の席で、友達と向かい合ってハンバーガーを食べていた。
大きな口を開けて、ほっぺたをパンパンにして。
「あ...」
立ち止まっていたら、あなたがこっちを見て
数秒、目が合った。
慌てて目を逸らして、自転車に乗る。
心臓が壊れちゃいそうな位にドキドキし始めて、私は何故だか泣きながら自転車を漕いだ。
・
私の学校は週明けから自由登校が始まる日。
私は急いで学校から帰って駅であなたを待ってみた。
30分。
帰って来ない。
1時間。
まだ帰って来ない。
もしかすると、私が帰って来るより前に帰ってしまったのかもしれない...。
そう思い始めた1時間30分後。
あなたが、歩いて来た。
相変わらずの猫背で、ポケットに手を突っ込んで。
突風にふらついて、乱れた前髪に迷惑そうな表情。
あなたは駐輪スペースの前を歩くから、私はそこであなたを見送る。
一番近くで、あなたを見れるのはここだった。
あなたが私の目の前を通り過ぎる。
「さっむ...」と呟いた声が聴こえて、胸がやっぱり苦しくなった。
結局声を掛ける勇気が出なかった事に泣きそうになりながら自転車を出そうとしたら、体が当たって隣の自転車を倒してしまった。
「うわっ！」
必死で止めようと思ったけど、全然間に合わなくてガタガターンと大きな音を立て、自転車は何台も将棋倒し。
呆然として立ち尽くしてると、あなたが振り返った。
え？って顔して倒れた自転車を見て、私を見た。
「おっと、悲惨」
あなたは、フハッて笑ってこちらに戻って来る。
「倒しちゃった？」
目の前に立ったあなたに訊かれて、何も言えなくて。
あなたは「大変だ」って笑いながら、自転車を起こしてくれた。
一台、一台。
起こしてくれた。
慌てて私も自転車を起こす。
「あの...ありがとうございます...」
「んーん。今オレ、神様ありがとうって思ってる」
「...え？」
「キミにどうやって声掛けよっかなー？ってずっと考えてたの」
「...えっ？」
「ねぇ、一緒にハンバーガー食わない？」
私の小さな世界が、開く音を聴いた。
・・・・・END・・・・・
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2017年2月22日 17時
