智あり雅やかな君に、潤い和み我も翔ぶ。【ars短編集】 (ページ12)

今日:9 hit、昨日:11 hit、合計:1,577,729 hit

２ページ12

失敗した...こんな事が起こるなんて思ってなかった。
告白できなかった事なんかサッパリ忘れて、みんなとトランプしてたら良かった。

今度は違う想いで泣きそうになって、また膝を抱えて顔を埋める。

「なぁにしてんの？」

緩い声に顔を上げると、私の横にしゃがんでる大野くん。
ビックリし過ぎてちょっと後ろにコロンと倒れそうになっちゃって、「どーしたー！」って笑った大野くんが肩を支えてくれた。

「あ...いや...えっと...」
「しんどいの？」
「あ...うん、ちょっと...バス酔いが...」

そっかー、って彼はそこを動こうとしない。

「あの...トランプしなくて良いの？」

チラっとみんなを見ると、盛り上がってる。
楽しそう。

「おれ、ババ抜き苦手なの。ババ持ってるとすぐバレんだよなー、何でだろ」

コテっと首を傾げて笑ってる。
胸キュンし過ぎて、ハァって息が漏れた。

「あ、大丈夫？」
「えっ！？」
「何か、息苦しそうだから」
「あっ...あ、ううん、大丈夫！」

そっか、って大野くんはやっぱりそこを動かない。

体育座りで膝を抱えてる私の隣で、ちょっと脚を開いた体育座り。
足の指をウニウニ動かしてる彼の爪先を、ボンヤリ見詰める。

「ねぇ、五十嵐」
「なに？」
「バス、弱いの？」
「え？」
「だって、今日もバスん中でめっちゃ楽しそうだったから」

大野くんが、こっちを見たのは気配で感じたけど私は彼の爪先から目を離さない。
だって、目を合わせたら顔が赤くなってるのだってバレてしまう。

「お菓子すげぇ食ってたし」
「......」
「あ、食い過ぎてしんどくなったんじゃないの？」

クスクス笑われる。

「そう...かも...」

上手く笑えたかな、ちょっと分かんない。

「おいっ！ヤバイ！先生来たっ！！」

その時、交替で見張りをしてた男子が凄い形相で部屋に戻って来て

みんなが慌てだした。

「布団に隠れろ！」
「電気消して！」

誰かがそう言うと、我先にとみんなが布団の中に隠れ始める。

「あっ、どうしよ...」

布団から離れた所に居たから、その流れに完全に乗り遅れた。
でも同じ場所に居たはずなのに、もう大野くんは一番外側にあった布団にもぐりこんでる。

「五十嵐！早く隠れなきゃ！」

布団から上半身を出した大野くんが、私を手招きした。

「でも...入れる布団が...」

無い...全部、コンモリと人が入ってる膨らみが出来てる。

「もうっ！」

そう言った大野くんが、私の腕を引っ張った。