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呆然とする私の前にニタリと気味悪く笑った顔が現れる。
｢そうだ、まだコイツらは生きている。……あぁそういや、お前の信条は何だったかな？"救えるものは救う""目の前の怪我人を治すだけ"……だったか？｣
まだソイツらは死んじゃあいねぇぞ、そう下世話に笑って私の横にがさっと箱を置いた。
何かと視線をそちらにずらすと、中から見覚えのあるものの数々が姿を覗かせていた。
『……！』
｢思い出したか？お前がこの国に置いてった医療具だ｣
『辞めた奴の物なんて捨てたらいいのに……』
｢何を言っている？
『は……？』
衝撃的な発言をされたような気もするが、それに反応するような精神状態じゃなかった。しかし、追い討ちをかけるようにさらに有り得ないことを告げられる。
｢ははっ、知らなかったのか！いいか、この戦争の中心にはな、お前がいる……つまり。
この戦争で死んでいった奴らはぜーんぶ、お前のせい、ってことだよ｣
は、と肺から空気が押し出された。
頭が真っ白になり、目の前の比喩ではない"人の山"が急に存在感を強烈に主張してくる。
……私のせいでこの人達は死んだ？……私が、いるから？
呆然とする私の様子を見て満足気に笑い声を上げた奴は｢じゃ、精々救ってやれよ｣とだけ言ってガシャンと音を立ててこの牢から出ていった。
残されたのは死体と、医療具と、瀕死の重傷者と、私。
もはや何も考えられなかった。彼らの元へ駆け寄り、無心で治療を始める。
いつの間にか手枷はある程度自由に動ける程度まで鎖が緩められていたが、そんなことには気付きもしなかった。
ただ、目の前で次々と息絶えていく兵士らに、いくら手を尽くそうともいとも簡単に散っていく命に、本当の本当に気が狂ってしまいそうだった。
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作者名：橘 | 作成日時：2022年3月23日 21時
