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─────一体どのくらいの時間が経ったのだろうか。
日の光が入らないため何も分からない。
痛みとその他様々により朦朧とする意識に入り込んできたのは、よく嗅ぎ慣れた異臭だ。
『……？』
殴られたせいで目が腫れていて視界がぼやけてよく見えない。
しかし、何かが積まれていることだけは分かった。
もう少し近づいて見てみようと重たい身体を引き摺ると、がしゃんと大きく鎖の鳴る音がする。
それで私の意識が戻ったことに気付いたのだろうか、今度は誰かがこちらまで歩いてきたようだった。
「……それが何だか分かるか？」
分からない、と首を振ろうと思ったが止める。頭の片隅では分かっていた。私がこの臭いを間違うはずがない。
その事実を認めたくなかっただけ。
「その感じだと分かってんな？
─────あぁそうさ、死体だ。敵味方問わない、な」
ひゅ、と喉が鳴った。
『……な、んで、』
声が枯れて上手く声が出なかったが気にならない。徐々に見えるようになってきた視界もそれらが本物だと脳に訴える。
臭いも相まって、気が狂いそうだ。
入ってきた敵兵はそんな私を見て鼻で笑ったあと、誰かに何かを伝える声が聞こえた。何を言ったかは聞き取れなかった。
少しの後、何やら台車のようなものを転がす音がして、目の前に中身がドサドサと落とされた。
それが何かなんて、薄暗いこの空間でも嫌でも分かる。
……否、違う
『い、生きて、る……？』
かすかに聞こえる小さな呻き声や瀕死の呼吸音。
何だこれ。死体じゃない。瀕死の負傷者だ。何だこれ、なに、これ…………
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作者名：橘 | 作成日時：2022年3月23日 21時
