億劫 ページ7
『ルカくん！？』
そこには茶髪の髪を無造作にまとめ、｢解読上等！｣と漢気満載な文字で書かれているTシャツを着たルカくんがいた。
...いや、アンドルーさんもそうだけど、そのオリジナリティ溢れるTシャツはどこで売っているの...？
まぁルカくんの登場に突っ込みたいところはいろいろあるけれど、彼はニコニコといつもの人懐こい笑みを浮かべて私の隣に並ぶ。
｢こんなところでこそこそしている不審者がいたから気になってしまってね！まさか君だったとは！｣
__あんたの格好の方が余っ程不審者だよ。
と思ったけれど言わないでおいた。
私がこそこそしていたのは事実だし...。
｢で、君はここで何をしていたんだ？｣
『えっ！？えー、いや、別に何も！売店の偵察！！』
｢な、何を偵察していたんだ...？｣
アカン。話が変にややこしくなる。
...そう思った私は適当にルカくんに話を振ることにした。
『ルカくんはこれから何するの？』
｢私かい？勿論見ての通り研究さ！今日の試合も全て終わったからね！｣
よく見ると(よく見なくても分かるけど)、ルカくんは2冊の本を抱えていた。多分図書館から借りたものだろう。
ルカくんは相変わらずだ。
『なんの研究？』
｢ふふん。きっと聞いたら君も興味が湧くよ。__空飛ぶ乗り物の研究さ！｣
『えっ！？』
ルカくんと私は1年前、共同で飛行機を作った。
いや、厳密に言えば自転車の進化系のような、本物の飛行機の退化系のような、そんな空を飛ぶただの乗り物だけど。
彼との研究や制作はとても楽しかった。
気付けば私は瞬時にその話に興味を持ち、なぜ自分がここでこそこそしているかすっかり忘れてしまっていた。
｢見たいかい！？｣
『み、見たい！着いてく！！』
＊
帰りたい。
__すごく帰りたい。
初対面の人間とはやはり相容れない。しかも2人きりなんて...。
Aももしかしたら、僕と初めて会った時にはこういう感情を持っていたのだろうか。
｢...？アンドルーさん、どうかしました？｣
｢あ、.....いや｣
目の前の新人__玩具職人のアニー・レスター。
彼女には何の罪もない。
悪いのは人と簡単に仲良く出来ない僕の方だ。
｢じゃあ、荘園の中を案内して下さる？とても楽しみだわ！｣
｢...。...ああ｣
僕は精一杯の笑顔をうかべたつもりだが、恐らく彼女には不気味な白い化け物がニタリと笑ったように目に映るだろう。
...ああ、辛い。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
怜(プロフ) - yuさん» ありがとうございます！読み返しもしていただけていたなんて....！嬉しいです！のんびり更新ですがよろしくお願いします...！ (2021年8月30日 17時) (
レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
yu(プロフ) - 空に生き埋めすっっごい大好きで読み返しもしてたので続編嬉しいです！！ありがとうございます！！ (2021年8月29日 21時) (レス) id: 96a71449d3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜 | 作成日時：2021年8月27日 22時
