脱出 ページ5
大きく鳴る心音よりもノートンさんの声の方がよく聞こえた。
『ハッチ...』
｢そう。僕が囮になるからなるべく解読を進めて。もしダメだったら、君はそこから逃げて｣
『え、ちょ...』
私が何か言う前に彼は影から飛び出して行ってしまった。
こうなってしまったら仕方ない。
『解読、しなきゃ...！』
鈴が着いた杖を思いっきり鳴らす。
鳴らすといろいろなバフがかかるんだけれど、場所がハンターにバレてしまうんだよね。
でも、今はノートンさんが相手をしてくれているから...。
私は私の役目を果たさないと。
＊
残り1台、それもあと少し。
ノートンさんが捕まってしまった。
【早く逃げて！】
彼からの定型文が届く。
彼の言う通りにするならば、今私はハッチに向かって一直線に走らなければならない。
『でも...』
なんだか、あの人を放ってはいけない気がする。
どこかで見た気がする。
見放してはいけない気がする。
なんでかは、分からないけれど...。
『解読中止、助けに行く...！』
場所はそう遠くはない。
もう一度鈴を鳴らして私は走り出した。
｢おや。てっきり貴方は逃げるものかと__｣
『うわ...っ！？』
目の前に驚いた顔をしたノートンさんと、横から霧を飛ばしてきたリッパー。
その霧に当たってよろける私。
｢僕のことはいいから...！｣
『...っ』
攻撃硬直がないリッパーはそのまま私の方へと足取り軽く歩いてくる。
｢早く逃げて！｣
ノートンさんの切羽詰まった声には耐えられなかった。
『ご、ごめんなさい...！』
私は身を翻してハッチの方へ走る。
リッパーは追いかけて来ない。
こうして逃げる自分が、尚更情けなかった。
＊
ひらひらとした装飾を風になびかせて彼女は去っていく。
｢貴方が味方を庇うのは珍しいですねぇ｣
リッパーは鼻歌を歌いながら僕を見下ろした。
人聞きの悪いことを言うな。
そもそもそっちだって最後の1人まで容赦しないくせに、ハッチに行かせるのは珍しいじゃないか。
｢...この場所から早く逃げたいだけだ｣
僕がそう言うと、リッパーは不本意そうに、でも楽しそうに頷いた。いけ好かない。
あそこで隠密を続けていてもこの場所にいる時間が長引くだけだっただろうし、そもそもリッパーのことだ。どうせ恐怖心を煽って弄んでいただろう。
言葉こそ紳士だが、彼はあまりにも意地が悪い。
...彼女はハッチに辿り着いただろうか。
まぁ、他人のことには興味は無いけれど。
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怜(プロフ) - 沙羅さん» ありがとうございます！！沙羅さんのコメントが嬉しくて私も毎回栄養補給させて頂いてます(？) 他作品の方はこれからも続くので、どうか末永くよろしくお願いします...！ (2020年6月25日 0時) (
レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 完結おめでとうございますとお疲れ様です…！どんな結末になるんだろうと色々妄想(？)してたのですが、ちょっと切なくて甘い感じ、好きです…！今回も栄養補給させて頂きました(ｴﾍﾍ)、ありがとうございます…！！喫茶店の方も楽しみにしてますね！ (2020年6月24日 21時) (レス) id: 3aa856ffa1 (このIDを非表示/違反報告)
?mi?(プロフ) - ゆったり更新で大丈夫ですっ！気長に待ってますっ！！ (2020年6月17日 4時) (レス) id: 9bb4cee45f (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - ?mi?さん» ありがとうございます...！ゆったり更新ですがどうかよろしくお願いします！ (2020年6月16日 18時) (レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
?mi?(プロフ) - 続きめっちゃ楽しみにしてますっ！！ (2020年6月16日 3時) (レス) id: 9bb4cee45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：怜 | 作成日時：2020年6月6日 16時
