叶わない期待 ページ6
「ただいまー」
「あら、おかえりなさい」
練習を終え、家に帰ってきたAは食欲を唆る匂いに釣られてリビングにやって来ていた。
机を見ると今日の夕ご飯は焼き魚のようで、とっくに仕事から帰ってきていた父親が新聞を広げて待っている。
「手は洗ったの？」
「うん。これ美味しそう！いただきまーす！」
席につき、家族とご飯を咀嚼しながら味を噛み締める。
たわいもない会話を繰り広げながら家族と食べるご飯は、特段に美味しく感じるのかAは表情を緩ませた。
「学校はもう慣れたか？友達は出来たか？」
「うん。同じサッカー部の子」
「あら！良かったわね。そういえばこの前の試合見たわよ！後半戦で巻き返すなんて凄いじゃない！」
「あはは…、皆のおかげだよ」
Aの両親はテレビでだが月山国光戦を見ていたらしく、逆転勝利をしてみせた試合に興奮を隠せないでいた。
熱い試合を見ると子供のように盛り上がる両親に、Aは苦笑いを浮かべる。
「でもお母さん、そろそろAがゴールを決めているところ見たいわぁ…！」
「……」
…それも一瞬で、母親がそう呟いた途端Aは動きを止めた。
その様子に気付くこと無く、Aの両親は過去を振り返ってくる。
「どのポジションも熟すのも凄いけど、やっぱりシュートを決めるAが見たいわね！」
「あの時の迫力は俺も今でも覚えてるよ。必殺シュートもカッコよく決まってたし、あの時の写真もあるんだからな！」
「Aもいつでもシュートを狙っていいんだからね。貴方の好きにプレーしていいのよ」
これ以上何も言わないで欲しいし、聞きたくない。
そんなAの思いが悪気も無い両親に伝わるはずもなく、温かいご飯を食べているはずなのに心はどんどん冷えていくような気がしていた。
「……うん。気が向いたらね…」
その時なんてもう来るはずないのに、心許無い言葉を両親に浴びせる。
シュートを打っていたなんてとうに昔の事だ。
彼が居てくれたからシュートを打てた、彼が居たからサッカーを楽しめた。
全部彼がAの見ている世界に色付けてくれていたのに、
…彼がいない雷門で、何を信じて打てばいい？
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もも(プロフ) - 1から読ませて頂きました！とっても面白くて好きです！夢主ちゃんと雪村くんの再会が楽しみすぎます！3月になり忙しいと思いますが、頑張って下さい！応援してます！ (3月1日 22時) (
レス) id: 4847ed5667 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 素敵な作品ですね。更新頑張ってください。 (2月22日 16時) (レス) id: c510f125c3 (このIDを非表示/違反報告)
ナギ(プロフ) - 狩屋と夢主ちゃんが木暮くんと春奈ちゃんみたいでかわいい！ (2月22日 9時) (レス) @page5 id: e35ef3ea0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rei | 作成日時：2024年2月10日 18時
