探し人 ページ20
「本当に良かったの？」
「いいんだよ、どーせバレないって」
体調不良なんてもの狩屋がユニフォームとジャージを取りに来た嘘に過ぎない。
Aと狩屋は河川敷に来ており、誰もいない河川敷で練習をしていた。
「でもどうして私なんかのためにそこまでしてくれるの？」
初めはA1人で誰も来なさそうな空き地で練習をしようと考えていたが、昨晩の狩屋の提案によって河川敷で練習する事になったのだ。
それも部活中なら誰も来ないし、独りより2人の方がマシだという狩屋の気遣いのおかげ。
「うーん、氷織ちゃんのためっていうか…俺の自己満っていうか…。だって、氷織ちゃんいないとつまんないし」
「…そう」
「あれ？照れてる？」
「うるさい！」
「あ！お前！！」
平然と照れ臭い事を言い出す狩屋に、Aは赤くなった頬を隠すよう一足先にドリブルで駆け抜けていく。
そのまま攻守に分かれての練習になり、最初は躍起になっていたものの2人とも足並みが次第に軽くなっていた。
「取れるものなら取ってみなさいよ！」
「このやろ！」
それは2人が似た者同士だからなのかはわからない。
ただ1つ言える事といえば、このひと時は2人にとって大切な時間であった事は確かなのだ。
純粋にサッカーを楽しむ姿がそこにあった。
「なんで取れないんだよ…。動きといいテクニックといいこんなにも違うんだな」
「…嫌になった？」
一向にボールを奪えないで疲労から膝に手を置き、肩で大きく息をしている狩屋にAが顔色を伺うように覗き込む。
このサッカー技術の差から生まれてしまう孤独に、Aは恐れていたのだろう。
「全然、寧ろこんなレベルでへこたれてらんねぇっての」
「…そっか！」
「氷織ちゃんも一々気にすんなって。大体ここには＿＿」
「ねぇ、狩屋くん」
狩屋の言葉を遮り、Aの寂しげな声がフィールドに木霊する。
先程とは違い何処か儚げで、今にも遠くに行ってしまいそうなAに、狩屋も思わず呼吸を止めてしまう。
例えるなら、今のAは風で吹き飛ばされそうなボロボロの布に近かった。
でも、辛うじて吹き飛ばされないように必死にしがみついている。
「パス練、しない？」
「パス練？別にいいけど」
しがみついてる先もそれはきっと狩屋自身じゃない。
狩屋もよく理解しているつもりだ。
だがどうしてだろうか、
「…！ありがとう」
誰かを探しているような、そんな気がした。
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もも(プロフ) - 1から読ませて頂きました！とっても面白くて好きです！夢主ちゃんと雪村くんの再会が楽しみすぎます！3月になり忙しいと思いますが、頑張って下さい！応援してます！ (3月1日 22時) (
レス) id: 4847ed5667 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 素敵な作品ですね。更新頑張ってください。 (2月22日 16時) (レス) id: c510f125c3 (このIDを非表示/違反報告)
ナギ(プロフ) - 狩屋と夢主ちゃんが木暮くんと春奈ちゃんみたいでかわいい！ (2月22日 9時) (レス) @page5 id: e35ef3ea0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rei | 作成日時：2024年2月10日 18時
