消えない過去 ページ11
「え？」
「化身って…」
「氷織は化身を使えないはずじゃ…」
A自身も化身を使えないと言っていたのは記憶に新しい。しかし白恋中のコーチである吹雪が嘘を言っているようにも見えず、雷門は戸惑いを隠せずにいた。
「…その様子だと、みんなに隠していたみたいだね」
「…わたしは、」
「そいつは化身使いだ」
雷門の様子を察した吹雪にAは気まずそうに目線を逸らす。それでも尚、言い訳をしようとするAに向けて追い打ちが掛けられた。
…海王学園戦を終えてから険悪な雰囲気を漂わせる、剣城から。
「兄さんが実力を買ってお前の事を調べたらしい。
数年前、早くして化身に目覚めた天才リベロとして北海道で有名だったらしいな、お前」
「……っ！」
「フィフスセクター同士の練習試合でも、こいつは俺と同じFWに立たされていたことがある。
氷織が化身使い、FWとしてのポテンシャルを持っているのも本当だ」
ずっとDFだと言い張ってきたAの実力に雷門全員が息をつまらせ、彼女の方へ視線が集中する。
それは次第に恐怖に変わっていき、体の震えを堪えるよう拳を強く握りしめる。
「なぜ化身を使わない」
剣城の疑問も今のAは聞いていない。
Aの耳に入っているのは自身を壁の隅に追いやる過去の声。
「A、どうして化身のことを隠していたの…？」
「何か言えない理由でもあったのか？」
「氷織、話してくれないか？」
天馬、神童、霧野たちの説得にも、Aは黙りを貫きながらも体の震えは収まらない。
普段のAからは想像も出来ないような、1人1人の顔を伺い始めた瑠璃色は生気が篭っていない。
「ひ、氷織ちゃ＿＿」
隣にいたから、ずっと見ていたからこそ狩屋はAの異常にいち早く気付く。
気付いたのに、初めて見るAの姿になんて声を掛ければいいのかわからなかった。
「ごめんなさいッ！！」
劈くようなAの悲鳴に雷門らは言葉を失う。
Aは自分の荷物をひったくるように掴むと、この場から逃げるように走っていった。
その時に見えたAの顔を彼の黄土色は見逃さない。
「氷織ちゃん！」
「氷織！狩屋！」
Aの後を追うべく、荷物を持って慌てて掛けていく狩屋たちを霧野が引き留める。
その阻止も聞かずに、狩屋はAを追いかけて行った。
そんな2人の様子を吹雪は悲しげに見つめる。
あの子の師匠として、何もしてやれない悔しさを噛み締めながら。
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もも(プロフ) - 1から読ませて頂きました！とっても面白くて好きです！夢主ちゃんと雪村くんの再会が楽しみすぎます！3月になり忙しいと思いますが、頑張って下さい！応援してます！ (3月1日 22時) (
レス) id: 4847ed5667 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 素敵な作品ですね。更新頑張ってください。 (2月22日 16時) (レス) id: c510f125c3 (このIDを非表示/違反報告)
ナギ(プロフ) - 狩屋と夢主ちゃんが木暮くんと春奈ちゃんみたいでかわいい！ (2月22日 9時) (レス) @page5 id: e35ef3ea0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rei | 作成日時：2024年2月10日 18時
