素直になりたい【降谷零】 (ページ29)

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日本に戻って4ヶ月。季節はすっかり夏である。

あれから何度かポアロにお邪魔したが、安室さんには会えずにいた。梓さん曰く、時々彼はいなくなるらしい。
私の方も会社で新しいプロジェクトが始まり、その準備にバタバタしていた。

・

ある日の夜、仕事がひと段落ついた事を祝して先輩と一緒にとあるバーに飲みに行った。店内は薄暗く、周りの人の顔を認識するのはほぼ不可能だ。

暫くすると男性2人が入店し、カウンター席に座った。そっちの方は少し明るいため容姿が確認できる。

2人ともスーツを着ており、1人は眼鏡をかけた神経質そうな人。
もう1人は

降谷だ。

安室透ではなく『降谷零』の顔をしている。

すぐにでも声をかけたいが、先輩と一緒のためそうはいかない。

気持ちを整理するためお手洗いに行ってくると断って、一旦席を立った。

どういう事だ？
降谷とあの男性はどういう関係なんだ？

そんな事を鏡の前で考えたが、いくらここで悩んでも仕方がない。
大きく深呼吸して廊下に出ると、あの男性が誰かと電話をしていた。

軽く会釈をして前を横切ると

「あぁ、今降谷さんと一緒だ。」

そう言ったのが聞こえた。

やはり、あれは降谷なのだ。
ただ、降谷零=安室透と決まったわけではない。

・

なかに戻ると、カップルが口論していた。
女性は泣きじゃくり、大声で叫んでいる。

その人はいきなり立ち上がり、空になったグラスで男性に殴りかかろうとした。

危ない！と思ったその時、

「僕でよければ、話を聞きますよ。」