どんな憂鬱だって消えていく。 ページ32
『absk』 ab side
朝、目が覚めると頭がズキッと痛んだ。
カーテンを開けると曇天に雨。頭痛の理由はすぐに分かった。
幸い、今日と明日はオフだから何もせずゆっくり過ごそう。
そう思ってとりあえず顔を洗って温かい飲み物を淹れる。
ズキズキと響く頭のせいで、毎朝見てるニュースは全然入ってこない。
ab「あー…なんでオフに限って…」
少し落ち込んでダイニングに突っ伏した。
ちょっとずつ、意識を手放していく。
目を開けると、俺はモノクロの世界にいた。
厳密に言えば色んな明るさのグレーによってメリハリがついてるような世界。どこを見てもグレーで昔のモノクロ映画の世界に飛び込んだようだ。
(これって…何色だったっけ)
なぜか俺は見たものがどんな色だったか忘れていて、元からこの色のない世界にいたように冷静だった。
なぜかさっきまでの頭痛は感じなくて、雨は降ってるけどなんとなく外に出てみようと玄関から飛び出した。
外の世界はやっぱりグレー。
色はないのに雨の冷たさは湿気、匂いは残ったままでなんだか不思議な感覚に陥った。
(これはこれで…面白いかも)
なんてブラブラと街を歩く。
ふわっとお花の匂いがして近くの花屋に立ち寄った。
そこに唯一色のある花を見つけた。
それは淡いピンク色のアネモネ。
ab「すいませーん…あれ？」
店員さんは誰もいなくてその色のある花がどうしても欲しいのに…。そっと花びら触れた。
その瞬間、
ブワッと全てのものに色がつく。
「…へい？おーい、りょーへ？あれ？」
意識が徐々に戻ってきて、俺の名前を呼ぶピンク色がふわふわ動く。
ab「あれっ…」
sk「あー、びっくりした！寝顔が綺麗すぎて起きないかと思った！」
ab「…佐久間だ」
sk「んー、ふふ、俺だよ？」
ab「なんで、いるの？」
sk「えー？仕事早めに終わったから来てみた！雨だから亮平頭痛くなってないかなって」
ab「…よくわかるね、俺のこと」
sk「なんでも知ってるよ」
それだけ言うとキッチンに向かって行った。
少しだけ跳ねるピンク色の頭を見つめていると、夢の中で唯一色を持ったあの花を思い出した。
ab「あれ…なんだったんだろ」
sk「ん？どうしたの？」
テーブルの向かいに座って俺と同じような体勢になって、少し心配そうにこっちを見る。
それが少し可愛くて、手を伸ばして頭を撫でると嬉しそうに笑う。
ab「佐久間は、お花みたいだね」
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作者名：stanley | 作成日時：2023年7月16日 1時
