＊ ページ27
合鍵で、康二の家に入る。
西陽が窓から入り込んでるのかリビングの扉の向こうは、少しオレンジになってる。
リビングの扉を開けようとする自分の手が少し震えてる。
怖い、そう思ってる。こんなことは今までになかった。
失うのが怖い。
でも、覚悟を決めなきゃいけない。
mm「…康二」
リビングの床に落ちるたくさんの写真。
頬に残る涙の跡。
あぐらをかいて項垂れてる愛しい恋人が、俺のせいで辛そうにしていることに涙が出てしまった。
mm「…康二、きたよ」
kj「めめ…」
こっちを向いて泣き疲れた顔をしてる。
mm「写真…並べたの？」
kj「……楽しい思い出、探しててん。めめ以外との」
mm「うん…」
kj「そしたらな…確かにたくさんあったんよ。るーた君と出かけた時とか、おいしいコーヒーのお店見つけた時とか…」
mm「うん…」
もう俺は、康二の楽しい思い出からいらなくなった？
そう言葉に出そうなのをグッと堪える。
思ったことを言いすぎるから失敗した。だから今日こそは…
kj「でもな…楽しい思い出を思い出すたびにな…めめに話したくなんねん。めめ…この時、るーたくんがな…って、でも、そ、したら…めめがおらんくて…っ…」
mm「…ごめ、康二…ごめん」
ボロボロと涙を流す康二を抱き寄せる。
俺の肩で咽び泣く康二に俺まで涙がでる。
(ダメだ…守らなきゃ…ごめんって…)
佐久間くんの言葉を思い出す。
『ちゃんと康二に甘えて慰めてもらって…ゆるく過ごせる先がある』
そうだ。
守るだけじゃない。
康二の優しさにいつだって守られていた。
甘えも慰めも康二だから出てきた俺だって。
mm「……康二、俺の話、聞いてくれる？」
kj「っ…う、ぐっ…ん…」
mm「俺ね、ずっと守ってあげようって思って生きてきた。何もかも。康二のことも。康二と付き合ってから寂しくさせないようにとか…ずっと笑っててほしいとか考えてた」
kj「んっ…」
mm「でも…気づいたら俺が康二に守られたんだって…俺は康二の優しさを探して…いつも追いかけて家に行っていつも欲張って康二を求めてたよね。それを優しく受け止めてくれるから、今の俺があるんだよ」
kj「っ…う、んっ…うん…」
mm「勝手に俺の気持ちだけで怒ってごめん…康二がどう思ってるのか…ちゃんと教えて？」
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作者名：stanley | 作成日時：2023年7月16日 1時
