あんたキス下手だね【五色 工】

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なんていうかよく、

五色って絶対草食系だよなとか言われるんだけど




実質はそんなことなかったのかもしれない。




先輩に出会うまではそんなにキスとかキス以上のこととかをしたいだなんて欲はあまり無かったし


どんなにかわいい人でも、綺麗な人でも、それほどまでに心が動くことはなかった。





だけど、Aセンパイだけは違った。






「……すいません、ボール行っちゃいました」





Aセンパイと初めて会話を交わしたのは、なんてことない、いつも通りの日常の一部で。



サーブレシーブをミスってその流れ球が体育館の外に出てしまった俺は、ボールを取りに外に出た。




ボールが転がって行った先で

そこに立っている人の足によって止められたボールを見て、その人に声を掛けた。




すかさず振り返った人物に、俺は思わず息を呑んだ。




「ああ、これ」




少し冷たくも感じるような声で、ボールを確認してからしゃがんだその人の


長い黒髪が、風になびく。





「はい、どうぞ。……あ、あとこれ、よかったらなんだけど白布に渡しといて欲しいの」

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