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瞼を上げ、ぼやける視界できょろきょろと辺りを見回す。どうやら保健室のようだ。起き上がろうとして、動かない体に疑問に思いながら首を動かし横を見る。そうすれば見えたのは、……確か妙齢ヒロイン、リカバリーガールだったはず。パソコンに向かう姿に声をかける。……かけようとして出たのは、掠れた声だった。
「起きたのかい？」
「……」
まともな声が出なさそうだったから頷いてみせる。そんな姿にリカバリーガール先生は顔を歪ませて私を叱った。
「こんなことが起こった後で言うのもあれかもしれないけどね、ご飯はきちんと食べてるかい？ 朝昼夕。3食だよ」
誤魔化そうとしたのに気づいたのか、そう付け加えられて諦めて首を横に振る。そうすれば呆れたようにため息を吐いた。
「ご飯はきちんと食べないと。あんた疲れで倒れたんだから」
「……すいませ、」
「……はあ」
掠れた声で謝ろうとした声に気づいたのか、リカバリーガール先生がため息を吐く。少しびくっと体が動いたけれど、どうやら叱りたい訳ではないらしい。
「あんた、隈も出来てるんだからね。休む時は休まないと。……難しいなら栄養だけでも取りなさい」
とりあえず今はゆっくり寝なさいな。時間が来たら起こすから。
そう言ってこちらを見たリカバリーガール先生は少しずれた布団を直す。その姿に、どこか亡くなった父方の祖母の面影を感じた。優しくて温かな祖母。私が幼少期の頃には亡くなっていた祖父のことをよく話していたっけ。
「……おばあ、ちゃん」
ふと漏れた呟きに私が気付くことはなく。その呟きをリカバリーガール先生以外が聞いていたことにも気付くことはなく。目から零れた涙は布団に染みを作った。
懐かしい気持ちは、ここにきて初めて感じたものだった。
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作者名：小春 葵結 | 作成日時：2021年4月20日 17時
