東さんの夢事情 (ページ29)

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「Aちゃん」
「……！蛙吹さん」
「行きましょ。早く助けを呼びに行かないと」
「……はい」

　考えに耽っていたようで隣にいた蛙吹ちゃんに背中を押されて走り出す。こちらを心配の色が乗った目で見る様子に、そんなにも酷い様子になっていたのかと思った。蛙吹ちゃんだって不安なはずなのに。先を知っている私ではなく、初めて体験する蛙吹ちゃんの方が落ち着いているように見える。狼狽えているのは私だけで、周りは不安を持ちつつも自分のやるべき逃げるという行いをしようとしている。……私は、伝えるべきではなかったのか。伝えて、事前に今回の対策をするべきではなかったのか。だが、伝えて何になる。そう思ってしまうのは、私がただ臆病だから。

　考えるな。考え込んで、何になる。私は、今やるべきことを。……それに徹さないと、落ちていくから。

「散らして、嬲り殺す」

　今、私のやるべきことを。

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