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その日のお昼。お茶子ちゃんにいつもの様に誘われた昼食に抗う余裕などなく、結局緑谷君の隣でご飯を食べていた。今日も昨日と同じようにうどん。一食だけしか食べるつもりは無いし、その一食くらいは豪華にしようと肉うどんにした。……そういえば、今日の夕食は食べれるだろうか……いくら何でもこれ以上夜を食べないと危ない気がしたから、今日は買い物をしてから帰ろう。お金は通帳を見たら結構な額があったので、節約しつつも使わせてもらおうと思っている。
そしてお茶子ちゃん達の会話に耳を傾けながら肉うどんをゆっくり食べる。そうしていれば聞こえた飯田君の言葉達に、涙が零れそうだった。それはきっと、飯田君が立派だったからとか、飯田君という推しが凄いからとかじゃない。もちろん凄いとは思うけど。……ただ、飯田君のお兄さんの話を少し聞いて、勝手に私の家族のことに思いを馳せて。……そうして、恋しくなったのだ。最近何事も悲観的に考えすぎだなぁ。どうしたら楽観的に考えられるんだろう。そこまでじゃなかったとしても、少しでも悲観的には考えたくない。だって、私が悲しくなったとして。周りは、周りにいるヒーローやヒーローの卵達は、こちらを心配そうに見るじゃないか。私のことは見なくていい。私のことは目に入れなくていい。ただただ、先を見据えて、私の事なんか視界に入れないで欲しい。……そう考えてしまうのは、おかしなことだろうか。
そう、考えに耽っていた時。耳に届いた警報に顔を上げる。驚いたような上級生の表情。動き混雑する様子を、私は一枚壁を引いた向こう側で見ていた。お茶子ちゃんが慌てて私の方を見て「侵入者だって！ 逃げないと！ 立てる！？」そう声をかけてくる様子を遠く感じ、けれどそれは一切表に出さないように「立てるよ！」勝手に口から漏れた言葉にああ、私は逃げられないのだと感じた。私は、従うことしか出来ない。私には、抗うことなどできない。そのことに泣きそうで。でも結局涙など流れなかった。
私はどうやっても死んでいるように生きているのだと。その時やっと気づいた気がした。
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作者名：小春 葵結 | 作成日時：2021年4月20日 17時
