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それはつまり、この世界に住んでいる人達の”個性”は基本使えるということで。……それはつまり、私が想像できる現実では人間にできないことはなんでも使えるというわけで。
”個性”は身体能力の一部だから使い過ぎたら色々と不便なものだろう。でも、それでも。……”個性”把握テストの時、私は疲れはすれどそれ以上の不調は出なかった。2位になれるくらいには”個性”を使っていたのに。
緑谷君とえらい違いだ。彼は芽生えたばかりの”個性”で骨が折れるくらいには反動が出る。……だが私はどうだ？ 私はこの世界に来たばかり。”個性”についてこの世界の幼い子供よりも知らない。この世界についても。そんな私に不釣り合いな”個性”を持っている。
私は、何も努力せずにヒーローになるチケットをもらってしまった。……こんなことが、あるだろうか。
「……やっぱり、来たくなかった」
その場に蹲り紙をくしゃくしゃにしながら顔を押さえる。零れた涙は誰にも拾われず、零れた言葉達は誰にも拾われず。こんな時に励ましてくれるはずの両親はおらず。……心が折れるほかなかった。何もしたくなくて、今日はそのまま眠ってしまった。
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作者名：小春 葵結 | 作成日時：2021年4月20日 17時
