34、子 ページ34
部屋の真ん中、床が腐っていたのだろうか、机が落ちていた。
窓の外は暗い闇。其のそばには何も入っていないクローゼットと動かない時計。
壁には、趣味の悪そうな不気味な絵。
ギィギィ、と音がする。上で何か揺れている。
音の正体を知る為、2階に行くことにした。
道は二手に分かれていた。
左側はドアがあるだけで、右側には、さっきのネズミ。近づくと、暗闇に消えていった。
左側の奥にはトイレがあって、ゴミ袋に扮したナニカがいた。
その前にあったのは、洗面所。
見間違えか、マットやその付近は薄い赤色で汚れている様に見えた。
マットが置かれている先、お風呂場は、壁には亀裂が走っていて、穴が開いているところもいくつかあった。
其処にも何もない。マンちゃんもいない。
隣の部屋へ行く。
其処には生活感を感じ取れた。だが、カーテンは引き裂かれた様にボロボロで、イスにも蜘蛛の巣が張ってあった。
母を求め、悲しそうに声を上げる赤ん坊のナニカ。
近くの家で、赤ん坊が生まれた。けれど、俺みたいに、自分の力で目を開くこともできず、言葉を掛けたいのに思ったように言葉が出ず、生まれて間もないころに死んでしまった。
親は、一生懸命子の名前を考えて「梨桜」という名をつけたのに、その努力は一瞬にしてはかなく散った。
もしかしたら、このナニカは「梨桜」なのだろうか
不自由もない俺に恨みを抱いているのだろうか。
どうして、自分だけ死んで、お前だけ生きているんだ、と訴えているのだろうか。
「ごめんな。梨桜。」
不意に出てきたのは謝罪の言葉。
「でも、まだ、逝かない。マンちゃんを見つけるまで。そしたら、俺を呪い殺してもいい。人を憎んでもいい。」
人はこの星に腐るほどいる。満足のいくまで、殺せ。
そう言って、梨桜の手を振り払った。
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作者名：Noel、wrwrdリスナー | 作成日時：2017年12月4日 19時
