【wrwrd】夏が終わるその前に【深夜廻】 (ページ21)

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ナニカ達は外にも、図書館の中にもいるみたいだ。

本棚の間に立っていて通せんぼをしている黒い影。

赤い足跡だけを見せて後から追いかけてくるナニカ。

懐中電灯みたいに夜道を照らして機械音を鳴らしながら回るナニカ。

本と本の間から、青白い腕を伸ばすナニカ。

昼は人が集まる図書館。夜はナニカ達が集まる図書館。

こんな事を知らなかった俺が怖い。俺と同じくらい怖がりの恭汰がこの光景を見たら泣いて、家に帰るだろう。

読書中のナニカ達を潜り抜けるように、でも、静かに歩いて、此の修羅場を抜けた。

抜けた先は、学校で言う小さな職員室。

壁を前に設置されている、机の間にある引き出し――、その前に何かが落ちていた。

拾ってみると、名札に図書館、と書かれていた。俗に言うマスターキー、とかいうやつだ。

「…これなら、あそこの扉を開けれる…」

急いで、此処から出ることにした。運のいいことに出口は入り口から見て3番目の部屋。一番、展示室のある階への階段がある所だ。

俺は走った。図書館のルールを破って走った。

だって、この状況で走らない人なんていないだろう。もしかしたらいるかもしれないけど。

走っている俺の足で階段を鳴らす。その音は弾んでいた。

また、あの扉の前に来た。

さっきは、開けれなかったけれど、今はカギがある。

ガチャリと音がした。

胸が躍った

これで、マンちゃんに会える…!

そんな希望と共に右だけを開けた。

その思いは砕け散った。