2,花 ページ3
打ち上げる音が聞こえてくる、
夜、裏山で、遠くから花火が上がる。毎年、それを見ていた。
誰もいない。二人だけの秘密の場。
「わぁ…」
今年も綺麗だ。夜の空を彩る青と赤の花火。
「もう、始まっとったなぁ…」
ほそぼそと、マンちゃんが言った。
「でも、とっても綺麗…!」
この時間はお互い、夏の楽しみだった。
俺の人生で一番の幸せ。
けれども、この幸せとは、今日でお別れ。
「二人で、花火を見るの、今年で最後になるんだね…」
「ひとらん、もうすぐ引っ越しやもんなぁ…
ひとらんが引っ越ししたら、寂しくなるわぁ…」
俺は、もうすぐ引っ越しする。
夏が終われば、此の町ともお別れ。
此処でしか出来ない事もあった。
川で、魚を捕まえたり、
どっちが多くお地蔵さんを見つけられるか勝負したり、
農業したり、鶏を育てたり。
勿論、マンちゃんと遊ぶ事も、だ。
「…
やっぱり俺、引っ越しするのやめるよ…。マンちゃんと離れ離れなんて、絶対嫌だよ。」
と、俺は言う。
でも、そんな権限、俺にはない。
少し間を空け、マンちゃんは、
「ひとらん…」と、呟いた。
「俺、ずっとこの町にいる。マンちゃんとずっといたい。」
そんな事、出来ないけれども。
願うなら、某有名漫画に出てくる龍が一つ、俺の願いをかなえてくれるなら、ずっと此処に居たい。
すると、
「それより、花火綺麗やで」
マンちゃんは話を逸らした。
最後でも、最後じゃなくても、花火は一緒。
…引っ越ししても、見る花火が一緒だったらいいのにな。
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作者名：Noel、wrwrdリスナー | 作成日時：2017年12月4日 19時
