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最初に提示された3週間という時間は、本当にあっという間で、引き継ぎに追われながらバレないように少しずつデスクを片付け、家の片付けも同時進行で行う、と言ったようなハードな毎日だったが、忙しければ忙しい程余計な事を考えずに済んだ。
藤ヶ谷の元へ送る荷物を纏めながら、余計な感傷に浸ったりすることもあったけど、最後に抱かれたあの日から俺たちの距離は更に溝が深まったかのように冷えきっていて、これで良かったんだ、そう思った。
いよいよあと2日でこのチームを去る、という日になっても未だにアイツらには伝えられずにいて、会社の方は良いにしろ、何かしらアイツらには自分の口から伝えるべきだと分かっているのに、臆病な俺はそれが出来ずにいた。
仕事をこなしながらも、どこか気分はソワソワしていて落ち着きがなく、どうやって伝えようか1日考えて仕事していれば、終業時間なんてあっという間だった。
面倒な課題を抱えたまま一旦家に戻り、藤ヶ谷の元に荷物を送る手配をしたら、いよいよ終わりだ。
もう、俺たちの間に残る物は何も無くて、唯一あるのはきっと俺にしかないであろう数々の思い出。
2人を繋いでいた合鍵も、揃いのアクセサリーも、勝手に拝借して何度も困らせた藤ヶ谷の服も、全部サヨナラだ。
俺は弱いから、自分で捨てられないものは全部藤ヶ谷の判断に任せることにして、ダンボールに封をすると共に、全部過去にするんだ、そう決めた。
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作者名:mr | 作成日時:2021年5月25日 18時