拝啓愛しくて最低な貴方へ (ページ20)

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きっかけはなんだったか、よく思い出せないけれど、デビューして1.2年経ったころから、雑誌の取材で聞かれるようになった「デビュー時の心境」を話す3人の姿は、間違いなく俺にとって苦しいものだった。

「辞めてくメンバーもいたけど、俺は絶対諦めないって決めてました。」

「中途半端に捨てることなんて、考えられなかった」

「何があっても、俺はここでの未来以外考えられなかった。」

インタビューの内容が、そのまま記事になっている訳ではなく、脚色が入っていることは理解していても、アイツらにとって俺は逃げたやつで、未来を諦めたヤツにしか映ってないんじゃないか、そう考えると、素直に活躍を喜ぶことも難しくなっていった。

少しずつ、このままでいいのかなんて考え出した29の誕生日に、俺が藤ヶ谷から貰ったのが家の鍵だった。

お互いの家の合鍵はとうの昔に渡してあるし、俺ん家の鍵を返されたかと思うとそういう訳でもないし、頭にはてなを浮かべていると、

「北山と、いつでも一緒にいたい。寝顔しか見れなくても、すれ違いばっかりでも、北山を傍に感じられる場所が欲しい。だから、俺と一緒にここに住んでくれませんか？」

そういいながら顔を真っ赤にして鍵を指さす藤ヶ谷の姿に、そういえばコイツは突拍子もないことばっかりするような、元々は俺にとって弟みたいなやつだったなってことを思い出して、何故か懐かしくなった。

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