岸くん短篇 (ページ19)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:27,997 hit

The previous day 2 ページ19

＊＊＊＊＊＊

新幹線を降りてタクシーに乗り込み

住所を伝えて一息つく。

東京は雨が降りそうな曇りだったのに

こっちは晴れていて

それだけで距離を感じるには

充分なことだった

タクシーを降りて

アパートを眺めると

部屋の電気はついてる。

外の階段を登り、部屋の前に。

やべぇな、心臓すげぇことになってる

震える手をごまかして

インターフォンを鳴らす

1回じゃ出ない。

そりゃそうだ

こんな時間に誰か来るなんて思わねぇよ。

もう1回鳴らす

さすがに合鍵はもらってないから

優太ドア開けて

一言送る

中からバタバタと音が聞こえて

ガチャという鍵の音

ドアロックの解除の音

ノブが捻られる音

そして

「優太！！！！」

嬉しそうなAの声

ドアの中に入り込んで

目の前にいるAを

思いっきり抱きしめた

『会いに来た』

「優太だ」

『うん』

俺のつけてる腕時計がピピッと音を鳴らす

「優太、誕生日おめでとう」

『ありがとな』

背中に回した腕に力をこめる

『なぁ』

「ん？」

『来て早々だけど』

「うん、なに？」

『抱いていい？』

途端に抱きしめてるAの体が熱くなる。

『なんだよ、今更照れんなよ』

「だってそんなはっきり……」

『A』

名前を呼べば

俺の方を見てくれることは

分かってるから

そのまま後頭部に手を添えて

動けないようにして

唇を食べるように

息もできないようなキス

裾を掴んでくるのは

苦しいけど気持ちいいって

ことも知ってる

『ここでいい？ベッド？』

耳元で囁くと

「ベッドがいい」

甘くて長い幸せな夜が始まった