52話 月花さん ページ5
女将「お待たせしました。月花ちゃんどす」
月「月花どす。本日はなんの御用でありましょか？」
そういい、下げていた頭を上げると、
月「原田はん！？まあまあ！よお、来てくだはりましたなぁ」
月花さんはそういい、左之さんに近づいていく。
原「やっぱり、お前だったか！！」
貴「なに？左之さん。知り合いなの？」
原「ああ。何度か相手をしてもらったことがあるんだ」
月「原田はんはうちのお得意様のおひとりどすから」
へー･･･。
零「月花ちゃん。今日は客としてきたんではないんどす。もうちと自重しておくれやす」
月「すんまへん。月露さん姉さん」
･･･。
貴「･･･零。月花さんは零が兄だって知ってるの(ボソッ)」
零「知ってるよ(ボソッ)」
貴「そう･･･(ボソッ)」
苦しくないのかな･･･？
兄を姉さんと呼ばなくてはいけない。
女である自分よりも兄の方が人気がある。
辛いはずなのに･･･。
月「でも、うち、原田はんのこと大好きなんどす」
原「おいおい。女将に怒られるぞ」
女将さんは仕事へ戻っていて、今、ここにはいない。
月「そうどすけど･･･」
零「月花ちゃん。あんたも一人前の芸妓やろ。自分の感情を表に出したらあかんやろ！」
月「でもー、兄さん」
零「蕾。人前では駄目だろ」
蕾「兄さんが信じた人たちなんやろ。なら、ええやん」
零「だけど･･･」
蕾「兄さんも京言葉で話してないやん」
零「まあ･･･」
普段はこんななんだ。
貴「月花さん、蕾って言うんだね」
蕾「へぇ。そうどす。まあ、うちが島原に来たのはほんまに小さい頃どしたから、ほんまに蕾という名前なのかはを分かれへんんどすがな」
零「だから、本当だっていつもいってるじゃん」
蕾「兄さんが勝手につけはったのかと疑っているんどすよ」
原「お前はいつも京言葉なんだな」
蕾「そうどすなぁ。まあ、2歳頃からずっと京言葉どすから、ほかの言葉は話せれないんどすよ」
原「へぇ」
月花さんもいい人みたいだな。
貴「さて、月花さんにも会えたし、そろそろ、おいとましましょうか」
原「そうだな」
零「またな。尊さん、原田さん」
貴「呼び捨てでいいよ。私も零だしさ」
原「俺もそんなかしこまった呼び方じゃなくていいからな」
零「じゃあ、またな。尊、左之さん」
蕾「ほな、また。尊はん、原田はん」
貴「うん。またね」
原「じやあな」
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作者名：織李 | 作成日時：2019年1月27日 9時
