50話 依月零から月露へ 零サイド ページ3
俺の家は名の知れた薬の名家だった。
父は誰からも信頼され、人情深い人だった。
母はとても優しく、暖かい人だった。
3つ下の妹もそんな父と母に似て、礼儀正しい子だった。
そんな四人家族。
毎日、笑顔が溢れていた。
幸せだった。
そんな幸せが永遠に続くのだと信じていた。
強く信じていた・・・。
俺が5歳の時。
家が・・・焼けた。
発火原因は分からない。
母と父は亡くなった。
俺と妹はなんとか生き残った。
急な両親の死。
幼い俺たちには受け入れられなかった。
名家の子でなくなった俺たちは近所から嫌がられ、邪魔者にされた。
そんな時に出会ったのが置屋の人だった。
俺も妹も綺麗な顔立ちをしていたから、そのまま置屋に行った。
お母さんと会って、妹は即置屋に入ることが決まった。
俺のことは相当悩んでいた。
男だけれどもこの子なら大物になる。
そう言って、置屋に入らせてもらった。
もちろん置屋の者以外に俺が男だってことは秘密。
もし男だと知られた時には島原から出ていく。
そうお母さんと約束した。
そして、俺は月露という名前を貰い、舞妓になり、芸妓となった。
妹は月花という名前を貰い、舞妓になり、芸妓となった。
普通に売られてきた人は地獄だと言うけど、俺たちにとっては第2の故郷。
どこよりも暖かい、天国だよ。
島原は。
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作者名:織李 | 作成日時:2019年1月27日 9時