【1.出会い】9 ページ10
石川は、もうどうにでもなれ、という気持ちがありながら、やはりアカギと東雲の勝負を楽しみにしている自分がいることに気付いた。
案外、アカギは苦戦するかもしれないな、などと空想を膨らます。あとはアカギと連絡が取れれば、この空想は現実のものとなるのだ。
確かに、組長がこの勝負を望む理由も分かる。
「分かった」
とうとう、石川は承諾した。
いや、元々石川が持ってきた話なのだが。
「では、勝負が成立し、場所や日取りが決まればまた連絡する。お前のことだから、また夜に賭場を歩いていたら見つかるだろう」
「多分」
「ああ。引き留めて悪かったな」
「全然。こんな良い話を持ってきてくれてありがとう」
「……逃げるなよ?」
「当たり前」
「聞いてみただけだよ。じゃあな」
そう言って石川は建物の影に入り、見えなくなった。Aも、また月の下を歩きだす。
川田組には感謝しなきゃな、と思い、無意識に口元が上がる。ようやく、あの赤木しげると打てるのだ。
「楽しみ」
静かに、だが確実にAとアカギの運命は交わり始める。
足元に広がるAの影には、9つに裂けた尾が生えていた。
1.出会い〈完〉...to be continue
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作者名:みゅー | 作成日時:2019年3月26日 2時