・九話 ページ10
続き
綺麗にセットされた髪をあえて崩すようにわしゃわしゃと撫でてそのまま抱きしめる。
何も言わなくても顔の近くに首筋がくるよう少し屈んでくれるのがまた愛おしい。
相「おい髪」
『いいじゃん別に、どうせすぐ家帰って寝るだけでしょ?』
相「…チッ」
そのまま深呼吸すると直に猛の匂いが感じられる。
…人間の匂いは好きだ、落ち着く。
相「満足したか?変態」
『んー…大丈夫、ありがとう』
相「嘘つけ」
そう言うと彼は噛み付くように口付けをしてきた。
…バレてる。最近なんだかんだ忙しくて誰も呼び出していなかったから実は少し物足りなかったのだ。
しかしこれは彼に口実を与えただけのような気もして少し悔しい。
『ふっ…は、はぁ…んっ』
相「お前…っわかりやすいんだよ、相変わらず嘘つくのは下手だな」
くそっ、満足そうにニヤニヤしやがって…!
しかしこうなってしまえばもう我慢できない。
仕返しと言わんばかりに猛の首筋や鎖骨に噛み跡を付ける。猛の匂いに満たされて頭がくらくらする。
相「相変わらずこれ痛てぇな…俺よりお前の方がよっぽど犬みてぇだ」
うるさい。うるさいうるさいうるさい。
我慢できなくしたのは猛だ。
そう思いながら夢中になっていると急に無理やり引き剥がされた。
気づけば血は出ていないものの肌が真っ赤な上に噛み跡だらけになっている。しまった。
相「おいもうやめろやりすぎだ」
『あぁ〜…ごめん』
相「別にいいけどよ…お前そんなに我慢できなくなるまで最近誰とも遊んでなかったんだな、好きな男でもできたか」
またこれだ。喧嘩してるんじゃないんだからいちいち睨まないでほしい。
『いないよ、いたらこんなことしてない』
相「ふーん…ならいい」
どうやら満足のいく返事だったようで彼の表情が少し緩む。
別に君のことが好きとも言ってないのだけれど彼の場合機嫌がいいに越したことはない。放っておこう。
『じゃあ私時間まずいから帰るわ、あんまり夜更かしするなよ』
相「お前は親かよ 言われなくてもやることねーんだからすぐ寝る、おやすみ」
『はいはい、おやすみなさーい』
彼は結局何がしたかったんだろうか?明日も学校だというのにこんな時間にわざわざ出歩くなんて…明日?明日学校?
『やらかした…あれは痣になるやつだ…』
あの跡を見るであろう幼なじみの不機嫌そうな顔が頭に浮かんだが今悩んでも仕方がない。明日のことは明日の自分に任せることにした。
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作者名:紅井 | 作成日時:2018年12月19日 1時