61話 ページ29
「どこから来たんだい？」
「え、だってそれは太宰さんの無効化の異能が――」
(……え？)
突如、Aは言葉を止めた。
「私の異能が、何だって？」
「無効化の、異能が……」
Aは呆然として口を閉じる。
待って。何これ、何だこれ。何で、私はこんなことを知っている？ というか、そもそも。
――経験が一度しかないことを、何故私はこんなにも『理解』している？
太宰ですらその一回で読み取ることが出来なかった情報を、どうして頭脳で勝てるはずのない自分が分かっている？
「A？」
「あ……え、っと、ごめん、待って」
当事者だから？ にしたって、これはあまりにも。出来過ぎなのではなかろうか。
何故、と更に考えようとしたが、それは直ぐに太宰によって阻止される。
「話せないような内容？」
「や、そういうんじゃないんだけど……」
「嫌なら無理して話す必要はないさ。それより、そろそろこれ、ほどいてくれると嬉しいのだけど」
指に血が、回らなくって。
太宰が、少しひきつったような笑みを浮かべて鎖を揺らした。
＊ ＊ ＊
「早く言ってよ！ 馬鹿なの!?」
「いやあ、再会していきなり抱き着かれたから、言い出せなくって」
噓つけ、とAは一蹴した。抱き着かれたくらいで動揺するような男ではないし、そもそも抱き着いてもいない。純粋という言葉が彼の辞書には生まれた時から欠落していたのではなかろうかという程女癖が悪いくせに、よくもまあしれっと純情ぶれるものだ。彼に泣かされた女は両手両足の指を使っても足りないだろう。騙される方も騙される方だが。
太宰の包帯からヘアピン二本を抜き取ると、Aは拘束具のピッキングを始めた。異能で壊すというのはAの力では不可能、かつ太宰からも止められた。曰く、錠が開いていないように見せかけて、まだ捕まったふりをしておきたいとのこと。理由を尋ねると「なーいしょ」の一言で片付けられたので、きっとまたろくでもないことでも考えているに違いない。
拘束具は、自分が拘束されていたら確実にほどけなかっただろうが、そうでなければ簡単に開けられるものになっていた。なるほど、ここまで太宰の仲間が助けに来ることができるとはマフィアも想定していなかったのだろう。穴に片方のピンを差し込んで、もう片方を抜き差しすること十数秒。カチリと小気味良い音が鳴り、片方の錠が開いた。
「お見事」
太宰の片腕がだらりと垂れた。
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麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
