54話 ページ22
ガタ、と派手な音と共に、足元にじんわりと痛みが広がった。
「……？」
徐々に意識が覚醒する。どうやら、どこかに足をぶつけたらしい。横になっているらしく、背後が硬い感触の何かに当たっており、上には軽い何かがかけられている。覚醒すると共に、脳の奥の方からもまた痛みが大きくなってきて、Aは嫌々ながらも目を開けた。
見慣れない天井にAは少し動揺する。電気はついていない。一体ここは、と視線だけで辺りを見回すと、狭い個室であることが分かった。視界に入るものと言えば、白い壁に一つのドア、そしてポツンと置かれたクローゼット。反対側は壁になっている。誰か他にいるだろうか、と気配を感じようと感覚を研ぎ澄ませるも、感じるのは壁からの電気だけで人の気配は全く感じられない。
一人なのだろうか、とAがゆっくりと起き上がると、頭から何かがぱさりと落ちた。白く、折りたたまれたそれは、少しだけ湿っている。
(……タオル)
そうか、とようやくAは納得した。自分は、マフィアに潜入中にぶっ倒れたのだ。頭の痛みは確かにまだ残っているけれど、倒れるほどのものではない。ただ、この状態を続けていればまた倒れるだろうな、というのは経験則上分かっている。寝かせられていたのはソファの上で、上にかけてあったのは毛布だった。先ほど見たもの以外にあるのは、ソファの横に置かれたサイドテーブルのみで、やはり人は誰もいない。身分がバレているわけではなさそうだ。
ふう、と髪をかきあげて、Aはぼんやり遠くを眺めた。懐かしい夢を見た。いや全くもって懐かしくはないし、寧ろ嫌な夢なのだが。昔は毎日見たが、直近で見たのは一年くらい前だっただろうか。おそらく、ここに潜入しにきたが故の緊張から見たのだろう。変な汗が肌を伝って、雫となって落ちていく。魘されていたのか、服が肌に張り付いている。着替えたいが、ここでそんな贅沢は云っていられないだろう。仕方なく、濡れたタオルで軽く体を拭いていく。
夢は夢だとわかっているが、それでも寝ている間はそれに気づくことはできない。寝ている間はそれが現実のもののように感じるし、起きた後も寝ている時経験した感触がはっきりと残っている。このタイミングで、随分と嫌な夢を見たものだとAは自嘲気味に笑った。
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麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
