44話 ページ12
地下通路の出口にたどり着いたのは、入ってから約二十分程経ってからだった。因みに、図書館から地上で本拠地を目指すとすると、大体十分程度で着くことが出来る。倍の時間が掛かった計算だ。もう少し拠点に直通できるように何とかすべきではないのだろうか、とAは思ったものの、もう恐らく二度と使わないので気にしないことにした。
出口の扉を開け、外に出た瞬間に、目の前に広がったのは闇だった。何も、誰かに目を塞がれた、だとか、意識がブラックアウトした、だとか、そんな話ではなく、物理的に闇が広がっている。要は、真っ暗なのだ。
「え……あれ」
可笑しい。Aが地下通路の出口だと信じていた場所は、本拠地地下一階の、上りエスカレーター横の扉の予定だった。この時間帯であれば、未だ誰かしらこの建物中にいるだろうし、そうなれば通路には電気が点いているはずだ。だというのに、この暗がり。更に云えば、電気の気配が微塵も感じられない。
つまり、ここには電気が通っていない。
「ここ、どこ」
出口が変わったのだろうか。こんなことになるならば、念のためどこに辿り着くのか聞いておけば良かった。でも、そんな数年の間に出口を変えられるだろうか。それとも、そもそもAが通されたと思っていた通路は、実はもう封鎖されていて、違う地下通路に通されたのだろうか。
真逆、とAの脳裏をよぎったのは、もう一つの可能性だった。
真逆、それは有り得ない。何時そんな隙を与えたのだ。現に、自分は今、この許可証を持っているではないか。だが、それすら女の罠だったとしたら。この許可証すら、巧みな罠だったとしたら。
急速に身体が冷えていく。指先が冷たくなって、微かに痺れ始めた。
「嵌められた……？」
後ろの扉が音を立てて閉まり、辺りは完全な暗闇に閉ざされた。
＊ ＊ ＊
一方、その頃太宰は。
薄暗い地下、両手に鎖を繋がれた状態で、一人静かに目を開けた。眠るつもりは無かったのだが、目は閉じておいた方が、見学にやってくる者達の視線を躱し易いのだ。目は口程に物を何とやら、と云うが、正にその通りである。様子を見に来た者はまだ片手ほどしかいないけれど、あからさまに好奇心がちらついていた。ただし、見に来るだけで目を合わせる勇気すら持ち合わせていない。
太宰治？ お前本気で云っているのか？
間違いない。遊撃隊が捕まえたらしい。
嗚呼、またか。太宰は一つため息をついた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 210人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
