37話 ページ5
何時銃弾が飛んでくるか、と冷や冷やし乍ら、Aは足を進めていった。弾丸が飛んできたのならそれは、Aが侵入者だとばれたことを意味するからだ。Aは、思わず小走りになりそうになる自分をなんとか抑えた。ここはもう、ただの早朝の横浜ではない。マフィアの領域なのだ。少しでも怪しい行動を取れば、容赦なく殺されてしまう。
信号を渡り、長い坂道を登って行く。傾斜のキツイこの坂は、厭でも足の進みが悪くなる。それが今のAには有り難い。まるで世界には自分しか居ないのではないか、と思う程の静けさに、ここがマフィアの支配下であると思い知らされた。
坂を登りきり、右手に曲がると、図書館が見えてきた。ここの図書館は、世にも珍しい二十四時間開いている図書館だった。一般市民も使うことが出来るこの図書館は、夜でも勉強したい学生や、帰宅前の勤め人、はたまた終電を逃した人々にちょっとした人気がある場所だ。横浜にあるもう一つの政府直轄の図書館よりも利用者数が少なく、その上図書館の周りはちょっとした林になっている為に、人の目を気にせず、仕事や勉強に集中出来るらしい。
そう、マフィアの領域、とは云っても、他の場所と何ら変わりはない。ただ単に、そこに建っている建物凡てが、マフィアの所有物になっていて、且つマフィア構成員達が目を光らせている、ただそれだけの場所だ。それでも、Aは滅多にマフィアの領域へ近づこうとはしてこなかった。他の場所とは違う、ピリピリした異様な雰囲気をどうしても感じとってしまうからだ。それに、一度それを感じてしまえば、過去を思い出してしまう。
Aは重い扉を手前に引くと、その図書館に入った。真っ先に目に入ったのは、椅子に座って居眠りをしている男性警備員の姿だった。夜勤だったのだろうか、目の下に隈が出来ている。何の為の警備員だか、これでは全く解らない。それに、目だけで警備員の服装を確認すれば腰に拳銃ホルダーが付いていた。服に隠れて見えないが、ホルダーが膨らんでいる様子から、恐らく中身は入っているだろう。流石マフィアだ、警備員にまで拳銃を持たせるとは。
しかし、拳銃を持ったまま寝るとはいい度胸だった。拳銃を持った状態で寝るということはつまり、何時でも拳銃を奪ってくださいということと同義である。油断しきった顔で眠りこけているこの警備員は、きっと明日にはいないだろう。彼の後ろで光る監視カメラが、彼の命を奪うのだ。
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麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
