47話 ページ15
奥から、微かに人の足音がした。気のせいではない。しかも、徐々に近づいてきている。Aは弾かれた様に立ち上がった。途端に、しまったと後悔する。物音を立ててしまった。これでは、ここに誰かいますと自ら知らせているようなものだ。Aを処刑しに来たのか、それとも違う目的の誰かに。
ここで死ぬ運命だったのなら、最初から電気を放っておけば良かった。いや、今なら未だ遅くないかもしれない。電気を放って、やって来た誰かと共に死ぬ？ でも、もしも爆発が起こらなかったら？ それこそはっきりとこちらの居場所を教えるようなものだ。それにこんなところで心中まがいのことなどしたくない。誰かさんは喜んでするかもしれないが。
こんな時に限って、脳は考えても無駄なことをあれこれ考えだしてしまう。死ぬ直前に見るのは、走馬灯ではなかったの？ 違う、考えるべきはそんなことではなくて、どうすればこの絶体絶命なところから抜け出せるかであって――。
とりあえず、とせめてもの抗いのように、Aは足音を立てないようにゆっくりと後退を始めた。とはいえ足音の速度とこちらの速度は兎と亀ほどの差がある。死ぬ前の悪足搔きのようなものである。嗚呼、本当にこんなところで死んでしまうんだろうか。足音が近づいてくる。息遣いまで聞こえるようだ。まだ距離はある。否、それほどないかもしれない。音から判断するに、もってあと30秒くらいだろうか。いっそ走るか、電気を放つか、それとも、このまま下がり続けるか。ん、待てよ、地面で電流を伝わらせれば、いや、それは火花が――――。
「すみません、何方かいらっしゃいますか」
焦ったような声と共に、ぼんやりとした明かりが浮かんできた。
＊ ＊ ＊
真っ暗な通路に、懐中電灯から出る一筋の光、そしてやけにうるさく響く二人分の足音。まるでB級ホラーのような空間に、Aは一人苦笑した。もしかすると本当に幽霊が出るかもしれない。マフィアに殺されて恨みを持った怨霊など、数え切れないほどいるだろう。昔マフィアにいた時、確かあれは太宰の部下だったか、誰かが幽霊が出たと騒いでいたのを見たことがある。
目の前を、懐中電灯を照らしながら歩く金髪の女は、樋口という人物だった。先程のAの警戒心を跳ね上げさせた原因である。図書館から連絡を受け、Aを迎えに来たらしい。出口の変更を伝え忘れたから、迎えに行ってくれ、と要請されたそうだ。
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麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
