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五拾弐:降リ注グ雨 ページ10

─主人公side─

ぽつり。

頬に冷たい雫が当たった。

「雨…」

どんよりとした空からわたしの思いを映したかのように雨が降ってきた。
そのまま雨にうたれるがまま歩いた。
大通りへ出れば、人々は傘を差したり走って雨をしのげるところへ向かっていたりとあわただしかった。
その中ただ1人ゆっくりと歩く。
羽織りや髪は濡れて肌にくっつく。
そんなのも気にならなかった。

気にする余裕なんて今のわたしには無かった。
何も考えられなくてただただ邸に向かって歩いた。

──

邸に着くとフミさんがわたしの姿を見て慌てて、てぬぐいと着替えを持ってきて下さった。
お礼を言っててぬぐいを使って髪を拭いた。
すると玄関の扉が開いた。

「!!君、そんなに濡れてどうしたの?」

「……ひしださん?」

帰ってきたのは学校に行っていたはずのひしださんだった。

「何。俺が帰ってきたら悪い?」

「ち、違います…ただ今日はお帰りがずいぶん早かったですね。」

「?まぁ確かに早かったけど…そこまで早くはないと思うよ」

「……え?」

「今、もう朧ノ刻近くだけど?」

「!!」

“朧ノ刻”

その言葉でさぁっと血の気が引いた。

「そ、そうですか。わたし、部屋に行きますね。」

早口に言い切って部屋へ急いで戻った。

((パタン

「……はぁ」

なんとか部屋に戻れた…
とにかく今は着替えなくちゃ。
濡れた羽織りや袴を脱ぎ、先ほどフミさんから渡してもらったものに着替える。

もしかしたら目は紅くなっていないかもしれない。
淡い期待を持って鏡をそっと覗く。
でも、そこに写るのは何時もの黒い瞳ではなく、紅い血のような瞳。

「っ!!やっぱり力も戻ってるか…」

記憶とともに封じたんだから記憶が戻ったら戻るのは当たり前。
…今日、お手伝いが無くて良かった。
それに、もうできない。
明日芽衣さんと音奴さんの所に行って謝ってこよう。

「ってなんて言ったら良いの?!」

半妖だなんて絶対に言えない。
でも何にも良い言い訳が思いつかない!!

「どどどどうしよう?!」

あれこれ考えてみるけれど、現実味の無いものしか思い浮かばない。
まぁ、もともとの理由が現実味が無さすぎるのだけれど…

五拾参:知ラズ知ラズニ…→←五拾壱:取リ戻シタ残酷ナ記憶



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さく - とても素敵で素晴らしい話だと思います。小説書くのお上手ですね。 (2019年10月7日 9時) (レス) id: b8170bd752 (このIDを非表示/違反報告)
さく - とても素敵で素晴らしい話だと思います。小説書くのお上手ですね。 (2019年10月7日 9時) (レス) id: b8170bd752 (このIDを非表示/違反報告)
リンゴ(プロフ) - 春草さんが可愛すぎて....もうやばいです。小説上手いですね! (2019年6月5日 17時) (レス) id: 92d1256844 (このIDを非表示/違反報告)
里緒(プロフ) - 春草さん!とっっても素敵でした!桔梗の花言葉のところとか...大好きです!こんなに素敵な物語、ありがとうございました!! (2015年10月1日 22時) (レス) id: b89a9213f8 (このIDを非表示/違反報告)
シアン - 物語がすごいおもしろいです!!読んでいたら二日ですべて読み終わりました。 (2015年8月7日 22時) (レス) id: 60fbd9e7f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月陰†芽々 | 作成日時:2015年5月5日 11時

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