番外編:桔梗 九 ページ41
─主人公side─
「……良かった」
「へ?」
「あのまま君を失うかと思った…。そう思ったらすごく怖かった。」
抱き締める力が少し強くなった。
それを安心させるようにそっと抱き締め返す。
「…わたしも、春草さんともう逢えなくなってしまうと思ってすごく怖かったです。……でもどうして付喪神だって分かったんですか?」
自分で言うのもアレだけど、付喪神はわたしがみてもわたしそのものにみえたけど…
「まず変に思ったのは、朧ノ刻なのに君の瞳が紅く無かったから。…それに付喪神にも言ったけど、雰囲気が違ったんだ。これだけじゃまだ確信は持てなかったけどね。確信が持てたのは痣の位置が逆だったから。」
なるほど。
彼女は鏡の付喪神だ。
鏡は己の姿と逆を映す。
だから痣の位置がわたしとは逆にあったのか。
そして春草さんが付喪神の首巻きを取ったのはそれが理由…
((ボソッ「…でもあんなにくっついてた」
自分の口をついて出た言葉に驚く。
これじゃあまるでわたしが付喪神に嫉妬してるみたい…
そう思うとカッと顔が熱くなった。
いや、嫉妬してたのかな…?
でも春草さんに気づかれたくないな…
でもさっきの呟きは聞こえていたようで…
「ふーん。君、付喪神に嫉妬してたの?」
「そ、それはっ!!///」
「ねぇ、あの鏡の花が何か分かる?」
抱き締めていた腕を解いて春草さんは粉々に割れた鏡を丁寧に床の上で繋ぎ合わせる。
全て繋ぎ合わされた鏡にはあの花。
「これは…桔梗ですか?」
「そう。桔梗。じゃあ桔梗の花言葉って知ってる?」
((フルフル
「これを買った店の店主に教えてもらったんだ。桔梗の花言葉は…」
─永遠の愛、変わらぬ愛・心─
「だから嫉妬なんてしなくていい。俺の心は─愛は変わらないよ。」
不敵に笑う春草さん。
あぁ本当にその笑顔にはかなわない。
「わたしだって変わりません。この心と愛は、いつまでも春草さんだけのものですっ!!」
わたしの精一杯の言葉を伝える。
でもやっぱり恥ずかしくてそのまま誤魔化すように春草さんに抱きついた。
「…俺は君とずっと一緒に居たい。」
「わたしもっ……んっ…」
“居たい”
その言葉は春草さんの唇に塞がれて言えなかった。
その後も何度も角度を変えて接吻が落とされる。
徐々に体の力が抜けていく。
ぎゅっと春草さんにしがみつきながらその甘さに酔う。
─これから何があってもこの心は変わらない、変えさせない─
茜色に染まる空にそう誓った。
────End
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さく - とても素敵で素晴らしい話だと思います。小説書くのお上手ですね。 (2019年10月7日 9時) (レス) id: b8170bd752 (このIDを非表示/違反報告)
さく - とても素敵で素晴らしい話だと思います。小説書くのお上手ですね。 (2019年10月7日 9時) (レス) id: b8170bd752 (このIDを非表示/違反報告)
リンゴ(プロフ) - 春草さんが可愛すぎて....もうやばいです。小説上手いですね! (2019年6月5日 17時) (レス) id: 92d1256844 (このIDを非表示/違反報告)
里緒(プロフ) - 春草さん!とっっても素敵でした!桔梗の花言葉のところとか...大好きです!こんなに素敵な物語、ありがとうございました!! (2015年10月1日 22時) (レス) id: b89a9213f8 (このIDを非表示/違反報告)
シアン - 物語がすごいおもしろいです!!読んでいたら二日ですべて読み終わりました。 (2015年8月7日 22時) (レス) id: 60fbd9e7f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月陰†芽々 | 作成日時:2015年5月5日 11時