番外編:桔梗 四 ページ36
─主人公side─
「っ!?」
『こんにちは。目覚めさせてくれてありがとう。』
そう微笑むのは少し透けた綺麗な顔立ちの女の人。
足は床についてなくて、浮いている。
『貴女、ワタシと似たニオイがするわ。貴女も物の怪なのかしら?』
「う、ううん。わたしは半妖だよ。そう言う君は鏡の…付喪神?」
『そうよ。ワタシはこの鏡の付喪神。長い間眠り続けていたんだけど…』
長い綺麗な指がわたしの頬を包む。
鏡と同じでひんやりしていた。
『貴女の匂いで目覚めることができたわ。ありがとう』
お礼を言われたはずなのに背筋がぞくりとした。
それは付喪神のひんやりとした指のせいなのかそれとも中身のない笑顔のせいか。
『あのねワタシずぅっと鏡に閉じ込められてて、あまり外に出たこと無かったの。こうして人と話すことも久しぶりなの。ずっと寂しかったの。』
それは少し分かる気がした。
わたしも全てを失った時寂しかったから。
『ねぇ、ワタシが視える貴女だからお願いしたいんだけど…一つだけワタシのお願い聞いてくれる?』
「!!わたしにできることだったら…」
『貴女にできるコトよ。…いいえ、貴女にしかできないコトなの。』
頼られたことが少し嬉しかったし、純粋にこの付喪神のお願いを聞いてあげたかった。
『あのね、ワタシを買ってくれたあの若草色の髪の方が居たじゃない?』
若草色の髪…春草さんのことだろう。
コクリと頷き、続きを促す。
『ワタシねその方が気に入っちゃった。』
「…え?」
ニタリ。
付喪神が嗤った。
ゾクゾクっと背筋に寒気が走る。
後ろに後退ったけれど遅かった。
『だから………ワタシと変わって?』
「っ!!ぃやっっ!!!!」
がばりと付喪神がわたしに覆い被さる。
視界は闇に覆われた。
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さく - とても素敵で素晴らしい話だと思います。小説書くのお上手ですね。 (2019年10月7日 9時) (レス) id: b8170bd752 (このIDを非表示/違反報告)
さく - とても素敵で素晴らしい話だと思います。小説書くのお上手ですね。 (2019年10月7日 9時) (レス) id: b8170bd752 (このIDを非表示/違反報告)
リンゴ(プロフ) - 春草さんが可愛すぎて....もうやばいです。小説上手いですね! (2019年6月5日 17時) (レス) id: 92d1256844 (このIDを非表示/違反報告)
里緒(プロフ) - 春草さん!とっっても素敵でした!桔梗の花言葉のところとか...大好きです!こんなに素敵な物語、ありがとうございました!! (2015年10月1日 22時) (レス) id: b89a9213f8 (このIDを非表示/違反報告)
シアン - 物語がすごいおもしろいです!!読んでいたら二日ですべて読み終わりました。 (2015年8月7日 22時) (レス) id: 60fbd9e7f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月陰†芽々 | 作成日時:2015年5月5日 11時