《トドメの接吻》 愛は誰にでも

両片想い ページ17

尊氏の私を睨む目と低い声でひるみそうになるが、勇気を出して口を開いた。



「そうじゃないけど・・・エイトさんは尊氏が思ってるほど悪い人じゃない」



尊氏はそれ以上何も言わずに京子さんと行ってしまった。



「美尊ちゃん・・・」



美尊「ありがとっ・・・ありがとうAちゃんっ」



泣きながらお礼を言う美尊ちゃん。



「また何かあったら、私に言ってね」



美尊「うんっ・・・」



少しでも美尊ちゃんの力になりたい。



今の美尊ちゃんに婚姻届を出すだなんて尊氏もおかしいよ。



きっと前の尊氏なら優しく寄り添ってあげてただろうに。



どうしてあんなに結婚を急いでるの？





美尊Side



菜緒達を呼んでみんなで夕食を取っていた。



Aちゃんは食欲がないらしくて部屋で休んでいる。



私は菜緒達に今日会ったことを話した。



菜緒「いよいよ婚姻届出されちゃったかぁ。・・・でも、正直言うと美尊には尊氏さんの方が合ってると思う」



奈々子「でも尊氏さんにはAさんが・・・」



菜緒「シーッ！それとこれとは話が別よ」



奈々子「別じゃないよ！美尊には尊氏さんが合ってるのかもしれないけど、尊氏さんに合うのはAさんだよ」



真凛「そうだよね」



美尊「やっぱりみんなもそう思う？両想いなんだからお兄ちゃんは私じゃなくてAちゃんを選べばいいのに」



私が何気なくそう言うとみんなが驚いた顔で私を見た。



菜緒「えっ、あの二人両想いなの？」



美尊「うーん・・・両片想いかな。お互い片想い中」



奈々子「それって、私達から見たら凄いもどかしい状態だよね」



真凛「でもあの人達はそう簡単には想い伝えなさそう・・・」



真凛の言葉に私達は“そうなんだよねー”と口をそろえた。



真凛「あぁ。長谷部君が言ってたけど、あの夜、女の人がいたんだって」



美尊「女の人？Aちゃんのこと？」



真凛「ううん、別の人。エイトさんの知り合いなんじゃないかなぁ。その人のことを、宰子って呼んでたみたい」



美尊「宰子？」



そんな名前には聞き覚えがない。



旺太郎の知り合いなんてカズマさん以外知らないし。



美尊「寛之は？」



奈々子「向こうで、尊氏さんと話してたよ」



奈々子が部屋の外を指差しながら答えてくれた。



寛之なら何か知ってるんじゃないか。



そう思って席を立った。

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