《トドメの接吻》 愛は誰にでも

共通点 ページ13

「どうしてそんな・・・」



幸せになりたいのはだれだって同じ気持ちのはずなのに、彼女はなぜそれを諦めるようなことを言うのだろうか。



宰子「１２年前、私は死ぬはずだったの。でもそれをエイトに助けられた。エイトの弟さんが亡くなってしまって。私、幸せになっちゃいけないんだと思ってた。けど、エイトが幸せになっていいって言ってくれて。私の幸せは、みんなの幸せ。それだけで・・・あなた達が幸せになってくれるなら、私は幸せなの」



周りの幸せが自分の幸せなんて、考えたことなかった。



私は周りに仲のいい人さえいなかったから。



「・・・宰子さんは優しすぎるよ。エイトさんとキスをして、何回も同じ時間を繰り返して、誰かを救ったりして。それなのに・・・そこまで自分を犠牲にしなくても」



宰子「犠牲だなんて思ってない。本当に私は、みんなに幸せになって欲しい」







並樹家に帰って来た。



私の為にと用意してもらった部屋でベッドに仰向けで倒れた。



天井を眺めながら今日のことを思い出す。



私はあの時、宰子さんに何も言えなかった。



誰よりも相手のことを考え、その人の幸せを願う。



あんなに優しい人、どこを探してもきっといない。



それと同時に思い出す。



・・・１２年前。



確か、長谷部さんがバーで持っていたテープにもその年の日付があった。



“プロメテウス号”



・・・やっぱり気になる。



テープは尊氏への脅しに使われ、エイトさんはそれを執拗に欲しがっていた。



１２年前に起こった出来事に、尊氏、長谷部さん、エイトさん、新井さん、宰子さん。



少なくとも彼らが関わっている。



いや、エイトさんを殺した男も関わってるのかな。



どうしてこんなにもモヤモヤするのか。



私は彼らの共通点には関係ないのに。




考え込んでいるとだんだん瞼が重くなっていくのを感じた。

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