FEARS 目覚めた彼ら

決定権を持った男 ページ18

慎「あ、陸さん。・・・何やってんですか」




別の男の声が耳に届いた。




声の方へ顔を上げると二人の男がそこにはいた。




陸「コイツが逃げ出してたから、見つけたついでに始末しようと思って。いいだろ？壱馬」




壱馬「・・・」




会話の内容から決定権を持っているのは壱馬という男のようだ。




彼が一度頷けば私は殺される。




そう思うと体が震え出した。




慎「壱馬さん、どうするんですか」




“壱馬”は何も答えない。




沈黙の間、待っているだけで寿命が減っていくようだった。




北人「あっ！」




突然大きな声が廊下に響き渡る。




北人「やっと見つけた！」




肩で息をする彼は“陸”から私を切り離した。




その時にはもう“陸”の私を掴む力は弱まっていた。




北人「ホントに死にたがりだね、君は」




“北人”は自身の首に掛かっていたスカーフを私の右腕に巻き付けた。




「え・・・どうして」




見つかった場合、捕まることしか想像していなかった私は怪我を処置されるとは思ってもみなかった。




その時、私は何かを感じた。




鋭い視線のような、殺気のようなものを。




何気なく後ろを振り向くと赤い瞳の男と目が合った。




その目が僅かに見開いたような気がしたが“北人”に腕を引かれ、その場から離れた。




“陸”は後を追って来ることはなかった。









「あ、の・・・」




背中と横顔しか見えない彼に声を掛ける。




北人「何で逃げたの」




「それ、は・・・」




思わず口ごもると“北人”は足を止めた。




同じように立ち止まると“北人”は私を振り返る。




向けられたその目にはさきほどまでの優しい雰囲気はまるで感じない。




「うっ・・・！」




壁に強く押さえつけられ、その勢いで背中を強打した。




北人「なぜ逃げた」




低く重い声が私を圧迫する。




掴まれる肩にどんどん力が込められていく。




ここに来てからこんなことばかりだ。




痛い思いをしてばかり。




「・・・私は、あなた達の操り人形じゃない。




自分の命は自分で管理する。




勝手に殺させない！」




私は苛立っていた。まるで弄ばれているように感じる。




彼らは私の反応を見て楽しんでいるわけではなさそうだが。




「私の命はあなた達のものじゃない。




私の命の主導権は握らせない」




“北人”は私の態度に少し目を見開いた。

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