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彼女は、腰かけていた樹木を見上げる。
その横顔は、レイコさんと過ごした時間を思い出しているようで、とても儚げに微笑んでいた。


「――レイコとはまさにここで出会ったの。
ここに来ればまた会えるかも、なんて思ってたんだけどね。

友人と呼んでいいのか分からないけど、私もレイコも妖を見ることができたから、昔はレイコと一緒にいることが多かった。

今思えば、惹かれあったのかもしれない。
あるいは見える人が珍しくて、お互いに淋しさを紛らわせていたのかもしれない。

レイコが困っている時、悩んでいる時、怪我をしている時、ずっと傍にいたよ。」


そして、「――でも、もう逝ってしまったんだね……」と、名残惜しいように呟いた。


それはもう友人って呼ぶんだ、Aさん。
でも、そういうところが少しレイコさんに似ている気がして、笑みが浮かんだ。


レイコさんは独りじゃなかった。
Aさんという友人がいた。

その事実が自分のことのように嬉しかった。




「夏目様〜、ご無事ですかー?」


中級たちの声が聞こえてくる。
声がする方を見ると、先生と中級たちがこちらに走る姿があった。

ということは、結界が消えたのか。


「どうやら帰りが遅いから心配してたみたいね。」


「良い友人を持ったね、夏目」とAは付け加えた。


「無事だったか。」


先生は友人帳がまだ俺の鞄にあるのを確認すると、Aに鋭い視線を向けた。


「先程の結界に、この有り余る妖力……。
覚えがあると思えば、やはりお前だったか。」


斑の言葉に、Aは何も反応を示さず、ただ静かに斑を凝視している。

中級が「あの人間をご存じで?」と疑問を投げるが、先生は「まあな」と答えるだけで、あまり話したくないようだった。


Aが森の奥へ視線を向けると、眉をひそめて、一瞬だけ険しい表情になった。

そして、肩に弓矢をかけると、夏目に微笑む。


「会ったばかりで申し訳ないけど、用事を思い出したからもう行くわ。

レイコが遺した“それ”は大切にするんだよ。」


その時、ようやく夏目はAが友人帳の存在を知っていることに気付く。

夏目はAを引き留めようと名前を呼ぶが、そこにはもう姿はなく、Aが先程視線を向けた先へ風のように消えてしまっていた。

そして、Aが立っていた場所を見ると、お札が一枚残されていた。

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設定タグ:夏目友人帳 , 夏目貴志 , 的場静司   
作品ジャンル:アニメ
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moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新して下さると嬉しく思います。待ってます。 (2022年3月10日 14時) (レス) id: e6820645c8 (このIDを非表示/違反報告)
[アイク・ブルームーン]アイおっとり(プロフ) - 面白いです!更新待ってます! (2021年9月2日 23時) (レス) id: 466201e21a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神楽 | 作成日時:2020年9月21日 10時

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