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File10: ページ10

「おい、聞いてるのか?シルビア」



その声で我に返る。

厭になるほど聞き慣れた、ジンの声だ。


私の上司だった男。



「……ギムレットの抹殺でしょう。
誘き出す場所と日時は?」

「朔の夜、日付が変わる頃
場所は港近くの空き倉庫だ」



闇に紛れて決行ってことね。


ギムレットは、私の教育係だった。

銃の扱いをはじめ、近接戦、情報収集など
たくさんのことを教えてくれたのだ。


組織の中で生き残る術を教えてくれたのは彼女だ。



「それで、今回の私のペアは?
ベルモット?」

「いやお前一人だ」



ジンは鼻で笑って
「お前の晴れ舞台だな」と言い放つ。

いつもペアで任務を任されていたから
一人でこの類の仕事をこなすのは初めてだ。



「宮野明美の一件以来
役に立たないお前に、ボスはお怒りだ。

しくじった場合は覚悟しておくんだな」



私の組織への忠誠心を
確かめたいってことか。


淡々と言葉を並べるジンの話を聞きながら

コードネーム、写真、所属、人間関係……
と、順番にギムレットの情報を手帳に記す。


ジンは殺した人の顔と名前を忘れるから
何かあった時のために、と言って記録している。


でも、本当は忘れないため。

自分への戒めだ。









コツ、コツ……と
ヒールの音が建物に鳴り響く。

待ち合わせ場所には、ギムレットが先に着いていた。


私を見るなり彼女は目を見開く。



「まさかあなたが来るとはね。
ジンに言われたんでしょう、始末しろって」



私が来ると聞かされてなかったらしい。

でも、彼女は
自分が呼び出された理由を知っていた。



組織に入って、何の知識もない私のために
彼女は沢山のことを教えてくれた。


だから本当は始末したくない。

でも、この仕事を遂行できなければ
今度は私が始末される番だ。



「……こんな形であなたと会いたくなかった」



それは私の本心だ。


ギムレットの顔が苦痛にでも耐えるように歪む。

いや、涙で視界が歪んで
そう見えたのかもしれない。



「最後に、大事なことを教えないとね。


もし、組織を抜けたいと思う時が来たら
闇の男爵を頼りなさい。

あなたを守ってくれる人が必ずいるから」



私は彼女を始末しないといけないのに
幸せそうに笑みを浮かべる彼女を見るのが辛くて
トリガーにかけた指に力を込めた。


彼女の最後の言葉が
ずっと脳裏で繰り返し響く。



「ーーーーあなたに会えて良かったわ」

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設定タグ:名探偵コナン , 赤井秀一 , 沖矢昴   
作品ジャンル:アニメ
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神楽(プロフ) - 舞さん» ありがとうございます!少しずつになりますが、頑張って更新します(*'▽'*) (2021年7月15日 1時) (レス) id: 526cb756dd (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新頑張ってください^o^ (2021年7月14日 7時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - マナさん» こんばんは! (2021年7月10日 20時) (レス) id: 526cb756dd (このIDを非表示/違反報告)
マナ - こんばんは… (2021年7月10日 18時) (レス) id: 55773c0381 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神楽 | 作成日時:2021年6月5日 22時

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